※生肉なので自己責任でお願いします。現地の作り方を紹介する目的で書きました。
アラブ・中東地域にバストゥルマ(バストルマ、バステルマ、パスティルマetc...)という、牛肉の生ハムがあります。
アルメニアに起源を持つバストゥルマは、現在エジプトやシリア、レバノン、イラク、トルコなど広い地域で食べられています。
牛肉の生ハムと言うと、イタリアの「ブレザオラ」が、そして、名前が近いものとして「パストラミ」がありますが、バストゥルマは塩漬けした牛肉にフェヌグリークを主体としたスパイスペーストを塗り乾燥させたもので、ブレザオラや加熱してあるパストラミとは一味違った風味です(パストラミとバストゥルマは混同されていることもありますが…)。
専門店やスーパーなどではバストゥルマは塊のままぶら下がっていますが、欲しい量を告げると薄くスライスしてくれるので、他のハムなどと同様に気軽に買うことができます。
大手メーカーもバストゥルマを製造しており、だいたいどこで買ってもおいしいのですが、レバノンは首都ベイルートにあるアルメニア人地区「ブルジュ・ハンムード」には、バストゥルマの有名店があります。
そのまま、またはスライスも買えますが、サンドイッチもはずせない。
コッペパンのようなシンプルパンにバストゥルマをたっぷり。
くにゅっとした食感と、強いスパイスの香りが存分に楽しめます。
バストルマはそのままつまむ他、卵と炒めてもおいしいです。
エジプトに住んでいるときはバストゥルマを作ろうなんて思ったことがありませんでしたが(少なくとも私の周りでバストゥルマを作る人は聞いたことがありません)、調べてみると意外と簡単にできそう。
と言うよりも、日本ではどうやっても手に入らないので作るしかありません。
まだ発展途上中ですが、覚え書きとして記録していきます。
バストルマは牛肉のももを使用します。
一般的には脂の少ない部分を使います。しかしながら、脂のあるタイプのバストゥルマも見かけるので絶対というわけではないようです。
塊1キロ~1.5キロぐらいがちょうどよいようです。今回は正味700g程の肉を使いました。表面の脂や筋などはきれいに取り除きましょう。
肉にしっかり塩をまぶします。
この時に肉にナイフや金串などで穴をあける方法もありますが、今回はあけていません。
どちらの方法でも、たっぷりの塩を優しく擦りこむようにまぶしていきます。
塩を全体にまぶしたら、ざるや網の上にのせます。
肉から水分が出てくるので、受け皿も忘れずに。
肉全体を覆うぐらいのトレイをのせ、重石(の代りになるもの)をのせます。
涼しいところ又は冷蔵庫で、1日程度水切りします。
タイミングが合わず2日水切りしました。
表面は半乾きのようになり、塩はすっかりなくなっています。
水分も出ています。これは捨てましょう。
肉に穴を空け、紐を通します。
日の当たらない場所につるし、1日程度乾燥させます。
実際は窓際につるしておきました。
今回は塩をまぶした肉をざるに入れて塩抜きしましたが、バットなどに直接肉を入れ、出てきた水分が浸かった状態で2日程度置く方法もあります。
その場合は、水で肉を洗い、キッチンペーパーなどで肉を包み、重石をして更に1日程度置いて水抜きを完成させます。
またまたタイミングが合わず2日間つるしてしまいました。
表面の水分はなくなりサラサラしていますが、肉全体が乾燥しているわけではないので、当然弾力はあります。
表面に塗るスパイスを作ります。
バストゥルマ作りに絶対に必要なのはフェヌグリークとパプリカ、あと塩。
これに好みのスパイスを混ぜます。
今回はフェヌグリーク大さじ2杯、パプリカ大さじ1杯、ドライコリアンダーシード大さじ1杯、クミン小さじ2杯、カイエンヌペッパー小さじ1杯、ミックススパイス小さじ1杯、黒コショウ小さじ1杯、塩小さじ1杯を使いました。
にんにく1.5個をペースト状にして、スパイスを混ぜます。
硬すぎる場合は水を入れて調整します。
生の赤唐辛子やパプリカをピューレにして加えることもあるようです。
いずれにしても硬すぎず、柔らかすぎず、扱いやすい濃度にしましょう。
ペーストをまんべんなく肉に塗ります。
スプーンなどでは塗りにくいので手で塗りましょう。この時は手袋をした方がいいです。
塗り忘れがないように丁寧に塗ります。全体に塗ったら表面をなでるようにしてなめらかにしてひび割れなどを防ぎます。
時間をかけすぎるとフェヌグリークの粘りが出てきて作業しづらくなるので手早く行いましょう。
10日から2週間程度つるしておきます。
風通しの良いところが理想ですが、外に干すと虫や埃が付きやすいので、表面がある程度乾くまでは室内の方がよいです。
が、匂いがかなりきついので、普段の生活スペースや寝室につるすのはやめた方がよいです。
2週間経ちました。
表面は固くなっていますが、全体がカチカチというわけではありません。
真ん中から切ってみると…。
ちょうどよい弾力に仕上がっていました!
薄くスライスしてみましょう。
肉の内部までしっかり塩気とスパイスの風味を感じ非常に良い状態です。
当然ですが、かびが生えたり、ぬるぬるしていたり、変な匂いがする場合は失敗です。
忘れがちですが生肉なのでそこらへんは慎重に。
昨年のバストルマ。
確か今回よりも一回り小さな肉で作ったので、より内部が乾いた感じでしたが、こちらも大変美味でした。
ところで、バストルマ作りに欠かせないフェヌグリーク。
アラビア語では「ヘルバ」と言いますが、実はアラブ料理では頻繁には使われません。
エジプトだとよく見かけるのはヘルバのドリンク。
煮だしたフェヌグリークに好みで砂糖を入れて飲みます。
庶民的な喫茶店にも置いてあり(と言うよりもオシャレカフェには普通はない)、私はなぜかそういう喫茶店ではヘルバが飲みたくなり、大抵これを頼んでいました。
イエメンではフェヌグリークをすり潰して、苦みのあるソースにして使います。
ガツンとしたスパイスの何とも言えない匂い。
この匂いは、ちょっと日本にはない。
この辺りの地にある程度なじみのある人には、あ~、あの香り!とその当時を思い起こさせてくれるでしょう。
我が家では、ルッコラとカマンベールとバストゥルマのサンドイッチ。
どれも主張が強い具材ですが、見事にマッチして満足感大ありです。