イエメンには行ったことがないのですが、カイロにはイエメン料理レストランが多く、手頃な値段でボリュームのあるおいしい食事ができるので、頻繁に足を運んでいました。
カイロのイエメン料理屋さんの多くは店員もイエメン人なら、お客さんもほとんどがイエメン人。
イエメン人のお客さんが多いから、現地の味…、と、そう単純な事でもないですが、(外国にある程度住んでいると、イマイチなスシ屋でも妥協して行ってしまうってないですか?)
“外国”でしかイエメン料理を食べたことがないにもかかわらず、イエメン料理を知った気になっているのです。
カイロのイエメン料理は、しっとりお肉とごはんが絶品のマンディーが人気ですが、私が好きなのは「サルタ」。
マドラと呼ばれる石鍋で具材とスープ(イエメン方言でマラグ、正則アラビア語で“マラク”出汁の意味)をグツグツ煮て、熱々の状態で提供されます。
じんわり深みのあるスープにパンを浸して、一口。ジャガイモやひき肉をパンで探してつまんで一口。そしてふわふわの苦みのあるソースがきゅっと口を引き締める。
この味はイエメンだけの魅惑なのです。
(トップ画像が石鍋ではなくてすいません…。)
サルタの起源はオスマン帝国時代に遡ると言われ、肉で取 った出汁や野菜、米などの残り物を集めて作った料理だったということです。
現在は首都サナアを含めた北イエメンでよく食べられており、専門店も多く、もちろん家庭でもよく作られているよう。
残り物料理ということで、厳密な材料の決まりは特にないですが、トマトやじゃがいも、ツナ、挽肉、 米、卵などがよく使われるようです。特に肉が多いサルタは「ファハサ」と呼ばれます。
そして、サルタやファハサに欠かせないのが「ヘルバ」。上にかかった緑色のソースです。
ムースのようなふわふわの食感と、ほんのりとした苦み。始めて食べる人には抵抗があるかもしれませんが、慣れるとこれなしでは物足りなくなってしまいます。
「ヘルバ」とはアラビア語でフェヌグリークのこと。
イエメンではこれを水につけてから挽き、ふわふわのソースにして煮込みに加えたり、パンにつけたりして 食べます。
〈ヘルバソース〉
材料
フェヌグリーク …大さじ 2
ニンニク… 2 かけ
青唐辛子…1 本
パクチー …30g
クミン …小さじ 0.5
塩
作り方
① フェヌグリークは 5 時間から一晩水につける。
② ミキサーに水を切ったフェヌグリークを入れ、滑らかなムース状になるまでまわす。途中適度に水を足す。
③ ニンニク、青唐辛子を加え、全体が均一になるまでまわす。
④ パクチー、クミン、塩を加え再びまわす。
野菜はパクチーの他に、ポロネギ、ニラ、ミント、パセリなどを加えてもよいです。
挽いたフェヌグリークを使う場合は、2時間程に浸け、水を切り、しっかり泡立てます。野菜類はフードプロセッサーなどでペースト状にし、てからフェヌグリークに加えます。
このソースのポイントは、とにかくよく泡立てて空気を含ませること!
〈サルタ〉
材料
牛肉… 500g
玉ねぎ …1 個
トマト…2 個
青唐辛子…2 本
ニンニク…2 かけ
じゃがいも…1 個
トマトペースト…大さじ1
ミックススパイス …小さじ 1 (クミン、シナモン、カルダモン、オールスパイス等)
ターメリック…小さじ 4 分の 1
塩、油
作り方
① 玉ねぎとニンニクをみじん切りにする。鍋に油を熱し、透き通るまで炒める。一口大に切った牛肉を加 え、表面の色が変わるまで炒める。
② 小口切りにした青唐辛子、ざく切りのトマト、トマトペーストを加え、トマトが煮崩れるまで炒める。
③ 一口大に切ったじゃがいも、スパイスを加え、軽く混ぜる。水、塩を加え肉が柔らかくなるまで蓋をして 火にかける。
~仕上げ~
① 石鍋(今回は金属製の鍋を使用)に油を熱し、みじん切りの玉ねぎ、小口切りの青唐辛子を軽く 炒める。(全て分量外)
② スープの中の牛肉とじゃがいもを加え、軽く炒める。
③ スープを加え、煮立たせる。
④ ヘルバソースを加え、鍋の縁が乾いてきたら 火から下ろす。
残り物料理なので、具材は家にある物で構いません。
①で、玉子やパプリカなどを加えてもよし、スープは今回の様にトマト煮込みでもよいし、肉のゆで汁でもOK。
石鍋で具材を炒めて汁気を加えて、ヘルバソースをぼてっとのせればサルタの出来上がりです。
サルタやファハサには「マルージュ」というシンプルなパンを添えて食べます。
熱々をパンですくっていただきましょう!
フェヌグリークはホール、パウダー共にネットで買えるようです。