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【カイロ】エジプト農村の家庭料理が楽しめる大人気レストラン


異常なインフレなど問題が山積みで、生活が苦しい!と誰もが叫んでいるエジプトですが、その一方でカイロには様々なタイプのレストランがオープンしています。私はエジプトを離れてから5年が経つのですが、その間、カイロのレストラン事情がガラッと変わってしまったような、そんな雰囲気さえあります。


今回(2024年2月)のエジプト滞在で訪れた「ハグーガ」も、新しいタイプのレストランと言ってもよいかもしれません。がっつりエジプト伝統家庭料理を出すお店で、3年ほど前にオープンして、今や誰もが知る人気店に急成長したレストランです。

このお店の噂はカイロ在住の友人・知人から聞いており、SNSなどを見ては、今回の滞在で絶対に行きたいレストランリストに入れていたほどでした。

エジプト人の友人と食事する約束をし、彼女が「今カイロで人気のお店と言ったらここよ!」と連れていってくれたのも、そう、この「ハグーガ」。突然ハグーガチャンスがやってきた。


お店の名前のハグーガは、年配の女性に親しみを込めて呼ぶときに使う敬称のような言葉です。

メッカ巡礼を行った人に対して敬意を込めてハッグ(ハッジュ)、女性に対してはハッガ(ハッジャ)と呼ぶのですが、実際にはメッカ巡礼を行ったかどうかはあまり気にせずに、年配の人に対して呼びかける時などに使われています。

ハグーガは、ハッガが訛ったような感じで、より親しみがこもったようなイメージです。


お店はエジプトの農村をイメージした作りで、テーマパークのようで楽しい。野外席がメインですが、室内席もありますよ。

開店時間は午後3時。我々が訪れたのは開店時間から30分ほど経った3時半ごろでしたが、既に満席に近い状態。木曜日(エジプトは金曜日が休みです)ということもあるかもしれませんが、大繁盛ぶりがうかがえます。


メニューはランチョンマットのような、1枚もの。

エジプトの素朴でがっつりした家庭料理が並び、テンションが上がるメニューです。右上から、炭焼き、オーブン料理、ハグーガの料理(このお店ではぶどうの葉などの料理が並んでいます)、グリル、ハトとアヒル、マハシー(詰め物)、ソフラ(テーブルの意味)、バター炒め、煮込み、炭焼きハワウシ、お子様メニュー、飲み物、デザート、米料理、スープ、サラダとなっています。

何でもあるな。


エジプト料理の代表と言ってもよいのがモロヘイヤ。モロヘイヤを細かく刻んで鶏などの出汁に溶かした料理です。もちろんこのお店もモロヘイヤを出しています。日本だと「モロヘイヤスープ」として知られていますが、実はあの料理はスープではなく、あくまでもおかずのようなもの。そのためメニューのスープの欄にはないのでご注意を。


そして、アラブ料理の中では抜群に知名度のあるホンモス(フムス)ですが、エジプトでは一般的ではありません。もちろん、全く存在しないわけではなく、そこそこのレストランではメニューにあったり、近年はエジプトにもシリア料理のお店が増えているので、そういったお店では当然出しているのですが(そして、エジプト以外の国にあるエジプト料理レストランでもホンモスは大抵置いてある印象です)、エジプトの家庭の一般的な食事で登場することは普通はないです。

一度だけ、エジプト人の友人宅での食事にホンモスが登場したことがあり、そのことを尋ねると、「うちはサウジでの生活が長かったから、普通のエジプト料理とはちょっと違うのよね~、(今カイロで住んでいる家は)オクトーバル(カイロでシリア人が多い地域)も近くてホンモスを売っている店もあるしね。」なんて“言い訳”つきでした。

このお店にも、ホンモスはメニューに見当たりません。

ちなみに、ホンモスとはアラビア語でひよこ豆のこと。ピューレになったいわゆるフムスはアラビア語では「ホンモス・ビ・タヒーナ」などと呼びます。もちろん省略して「ホンモス」と言ったりするのだけど。


お皿や使い捨てカトラリーなど、全てがオリジナル。

しかも素敵なデザイン。お皿なんてお土産に買って帰りたい。

ティッシュも最高。


あれもこれも食べたい、と目移りしてしまうメニューですが、まずは前菜から。

ナスとトマトのマリネとモルタをチョイス。

これは私が大好きなエジプト料理のひとつ。ナスとトマトのマリネ(アラビア語ではピクルスという表現を使ったり…)は、ドライコリアンダーシードお酢、そしてがつんとニンニクが効いた、私の中では「ものすごくエジプトっぽい味」の料理。友人にそんな話をすると大笑いし、でも、そうかもね~、なんて言っていました。これの味を知らずして、エジプト料理は語れない。

このレシピは拙著『はじめてのアラブごはん』でも紹介しています。暑い夏にもぴったりなので、是非作ってほしいです。

そして、写真右上の茶色いものがモルタ。これはパターから澄ましバター(サムナ)を作るときにできる不純物なのですが、これがまたクセになるのです。ちょっと酸味があり、どことなく渋みがあり、ばしっとこんな味、と形容しがたい。


ふすま付のパンも、むちっと非常に美味。

いつでも、どこにでもあるのがこの「アエーシュ・バラディ」なのだけど、レストランですこぶるおいしいアエーシュが出てくると、嬉しい反面、メインの料理が出てくるまでに食べ過ぎてしまうので困ったものなのです。


今回は定番の野菜サラダ「サラタ・バラディ」は頼まなかったのだけど、そのサラタ・バラディの汁が、このようにコップに注がれて配られることがあります。

これは「ウイスキー」と言って、まぁ、サラダの汁なのだけど、塩気と粉唐辛子の辛味が結構効いて、一説によるとウイスキーのようにチビチビ飲むからそう呼ばれているのだとか。

ちなみに、サラダ・バラディはトマトやキュウリ、玉ねぎなどをレモン汁や酢、塩などで味付けし、油は入れないことが一般的です。エジプト料理で油を使わないのはパンとサラダ・バラディだけだ、なんて言われたりもします。確かに…。


ここからはどどーっとメイン料理が続きます。

素焼きの器でお肉と玉ねぎを煮込んだ「ターゲン・バサレイヤ」。バサルはアラビア語で玉ねぎのこと。甘くとろんとした玉ねぎがたっぷりです。

まだグツグツ熱々のターゲンを掘っていくと…。

ごろんとしたお肉とねっとりしたじゃがいもが、トロトロの玉ねぎに絡まっています。


レバーや砂肝の炒め物「マザリーカ」。

このお店のマザリーカは、ハトの内臓を使っています。

マザリーカ自体あまりお店で見かけない印象で、ハトの内臓もあまり売っていないので(ハトは鶏屋で絞めてもらったり、スーパーで1羽買うと内臓も1セットついてきて、普通は内臓だけをまとまった量では売っていない)、見かけたら絶対に頼みたい。

脂たっぷりで重いのだけど、青唐辛子やお酢、にんにくなどがしっかり聞いて、むっちりしたパンでつまむと止まらなくなります。


ごはん物一つ目は、「ルッズ・ムアンマル」。

米を牛乳で炊いた料理です。米に牛乳やバター、エシュタ(クロテッドクリーム)などを混ぜ、オーブンで焼いたもの。意外とあっさりしています。焼き上がりに表面にエシュタがドーンとのっているので、そこそこのカロリー爆弾と化していますが。


ごはん物二つ目は「ファッタ」。

ファッタはちぎったパンを使う料理のことで、地域によってかなり違うのですが、エジプトのファッタはちぎったパンに肉のゆで汁をかけ、ごはんとトマトソースをかけたものが一般的です。

犠牲祭の料理として有名で、その時期には、屠った肉を豪快にのせたファッタを食べます。


今回は肉などが乗っていない、プレーンなファッタを頼みました。

「お腹がいっぱいだろうけど、ここのファッタは絶対に食べてほしい」と友人。

何でも、ハグーガのファッタは、特にトマトソースが、お父さんが作ってくれていたファッタの味にそっくりなのだそう。

しっかりお酢の効いたトマトソース。

このファッタのトマトソース、そして、これまた代表的なエジプト料理として有名な「コシャリ」のトマトソースは、実はにんにくとお酢が効いたさっぱりした味なのです。

一般的にはこれらの料理のトマトソースには玉ねぎが使われず、たっぷりのにんにくとお酢が味の決め手なのです。

玉ねぎを甘く炒めたトマトソースでは決してない。エジプトらしい味は、こんな、ちょっとしたところから生まれるのです。


忘れてはいけないモロヘイヤ。

ドロッと濃厚で、パンに絡めていただきます。ごはんにかけるのも美味しいけど、最近はパン派になりました。

ちなみに、お子様メニューには「モロヘイヤ・ワ・ルッズ・ワ・クークー」という、モロヘイヤとごはんとチキンのセットがありました。友人曰く、子供は茹でたチキンを細かく裂いて、ごはんとモロヘイヤを混ぜて食べるのが大好きなんだそう。クークーはチキンの幼児語。なんかかわいい。


最後は「ロアーッ」。

薄い生地でひき肉を包んで焼いた料理です。表面にはとどめのエシュタ(クロテッドクリーム)が。

ロアーッは、アラビア語での綴りは「ラカーク」と書くのだけど、カイロ方言の発音だとロアーッ、となり、一見似ても似つかなくなります。アラビア語がある程度できれば何ら不思議はないのですが…。

ロアーッは使う生地が大きく分けて2種類あって、パリパリに乾いている生地と柔らかいタイプがあります。ハグーガは後者のようです。

どちらも炒めたひき肉を生地で挟んだり包んだり、重ねたりしてオーブンで焼きます。軽食のようで、これもなかなか重い。エジプト人のお家の食事に招待された時にもこのロアーッはよく登場するのですが、これを勧められるがままに食べてしまうと満腹になってしまって後が苦しい。でもおいしい。

ちなみに、ロアーッの生地は薄い生地、と言いましたが、バクラワに使うようなフィロペストリーではありません。フィロペストリーを使って同様にひき肉を挟んだ料理もあるのですが、こちらは「グッラーシュ」と呼びます。


ふたりで食べるには当然ながら多いのだけど、エジプトでは余った料理は持ち帰るのが普通です。

むしろ、持ち帰ることを前提に頼んでいるのでは、と思わなくもありません。

エジプトでは家庭料理を出すお店がさほど多くなく、外食で食べられるものは何となく決まっているのですが、ここ数年の間に、その習慣は大きく変わったように思います。

家で食べられるものをわざわざ外で食べるなんて、とか、家で食べた方が美味しい、などはよく耳にする言葉で、もちろんその考えや習慣は今もなお根強くあるのですが、料理を食べ歩く楽しみ、そしてそれを記録して発信する楽しみが普通の人々の間にも広がったことは、外食のあり方を大きく変える一因になっていると考えます。

これまでは料理と言えば、家庭内で受け継がれるもので、他人の料理に触れる機会が少なかった。しかし、近年はSNSなどを通して他人の料理に気軽に接することができるようになったと言えます。食文化は時と共に変わっていくものですが、他人の料理に触れることが格段に増えたという、今までになかったであろう行動様式が今後の食文化の変化にどのような影響を及ぼすのか、非常に興味深いところです。


我々が食べ終わってお店を出るころにはもう満席で、外には行列ができていました。

友人によると、このお店ができたころは、派手な内装とか見かけだけだと思っていて、料理はそんなに美味しいとは思っていなかったのだけど、実際は味が抜群によくて、あれよあれよという間に人気店になった、のだとか。


ハグーガと一緒に写真も撮れます。


ハトの塔もありますよ。

カイロのど真ん中でありながら、夕暮れの時間帯なこともあって、どこか牧歌的なエジプトの田舎の風景。


ハグーガのホームページはこちら


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