アラブや中東のお菓子と言うと、近年日本でもすっかり有名になったバクラワなど、ナッツやシロップをたっぷり使ったお菓子を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
しかしながら、甘さも控えめの素朴な焼き菓子が多いのもアラブのお菓子の特徴。
むしろ、家庭で行事ごとに作られるお菓子は、昔ながらの木型を使うビスケットのようなお菓子がほとんどです。
そんなお菓子の一つが「カアク・イード」。実はこのお菓子には名前がいくつもあって、「アクラース・イード」「カアク・アッバース」「カアク・ハミース」などと呼ばれることもあります。
シリア南部のスウェイダでは「ムラッシャム」と呼んでいます。
ターメリックとアニスを練りこんで、型で表面に模様をつけて焼いた、パンとビスケットの中間のようなお菓子です。
パンとビスケットの中間のよう、と言いましたが、実際はビスケットに近いものからパンに近いものまで(日本のふわふわのパンとは違いますが)様々で、名前で細かく分類してある、というわけではないようです。
パンに近いと「ホブズ・カーリブ(型パン)」「ホブズ・タービア(刻印パン)」などと呼ぶこともあります。
ダマスカスの庶民的なスークで売られていたもの。
パンのようですが、ターメリックの黄色い色と表面の模様がしっかりついています。
ベイルートのファーマーズマーケットでは、ビスケットタイプのものがありました。
「カアク・デブス(蜜)」とあります。どうやらキャロブのシロップが使われているみたいです。
我が家にある型は3本。昔から変わらない木の型は今でもスークで見かけます。
左のものがよく見かけるタイプ。直径は12センチほどで、ちょうど手のひらに乗るぐらいのカアクができます。
プラスチックの型もありますよ。
木型よりも細かい模様がつきます。
数年前、これを購入したときに、スウェイダ出身の友人から、ムラッシャムでも作るのか、とちょっとびっくりされました。(今はお店で買う人も増えているみたいですね)
それぞれ家庭のカアク・イードがあるので、どれが正解、というのはないのですが、今のところ私が作っているのはこのレシピです。
材料
小麦粉…200g
グラニュー糖…70g
油…50cc(40gぐらい)オリーブオイル、澄ましバター等
ぬるま湯…70cc
ニゲラ…小さじ1
白ごま…小さじ1
アニス…小さじ1
フェンネル…小さじ1(パウダー)
マハラブ…小さじ0.5 あれば(マハレブ、マーレブ、Mahleb、mahlab、Mahalepi、とも)
ナツメグ…小さじ0.5
ターメリック…小さじ0.5
イースト…小さじ1
塩…一つまみ
作り方
①小麦粉にニゲラ、白ごま、アニス、フェンネル、マハラブ、ナツメグ、ターメリック、イースト、グラニュー糖、塩を加え、よく混ぜる。
②油を加え、よく擦り混ぜる。砂のようになり、強く握ると塊ができるぐらいを目安にする。
③ぬるま湯を加え、よくこねる。ひとまとまりになったら蓋をして1時間ほど休ませる。
④型に油(分量外)を塗る。生地を取り、方に押し付けながら伸ばす。
⑤生地を静かに型からはがし、オーブントレイに並べる。
⑥180度に予熱したオーブンで15分、又は表面に焼き色が付くまで焼く。
今回はアニスはホール、フェンネルは挽いて使いましたが、お好みの状態で構いません。
砂糖はこの分量だと「おやつ」の甘さになります。
もう少し減らして「甘くないパン」にして、朝食や軽食として食べる場合もあります。
スパイスは、この他にシナモン、ジンジャー、マスティハなどを入れるレシピもあります。
多くのアラビア語レシピを検証したところ、ニゲラ、ターメリック、アニスは概ね使われていました。でも、これがなければ不正解、というわけではないので、手に入りやすいもので作ってみてもいいですね。
仕上げにオリーブオイルやすましバターを表面に塗ることもあります。
もっとサックリ、ビスケットタイプが好みなら、油を100cc(80g)に増やして、ぬるま湯を50ccに減らすとよいです。
油が多ければサックリ、少なければパンのようになるので、こちらも好みで加減してください。
型がない場合は、丸く伸ばし、ペットボトルのキャップなどを使って模様をつけてください。
アニスのスッとする甘い香りと、ボソッと、ちょっと重めの食感。
これぞアラブのおやつです。
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