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誰も教えてくれないセモリナ粉の話


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アラブのお菓子でよく使われる材料にセモリナ粉があります。
バスブーサマアムールハラーワなど、セモリナ粉を使うお菓子はいくつもあり、特別な材料ではなく、普通の小麦粉同様にどこでも売られています。

日本では一般的に、デュラム小麦という、硬質の小麦を粗挽きにしたものがセモリナ粉と呼ばれているようです。パスタの原料になる、ちょっと黄色っぽい粉、と言うと、何となくイメージがわくでしょうか。

一方アラビア語でセモリナ粉は「サミード」といいます。アラブのサミードについては、以前(2010年!シリアに住んでいた時です)に記事にしたことがあります。

このセモリナ粉、実は日本語でのセモリナ粉と、アラビア語でのセモリナ粉(サミード)で意味する範囲が少しずれていて、使用する際には注意が必要なのです。

まず、日本で売られているセモリナ粉は、色は黄色で、粒の大きさは小麦粉のように細かいさらさらタイプ。
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このタイプは、一般的にはアラビア語でサミードと呼びません。「タヒーン・ファルハ」と呼び、小麦粉(タヒーン)の仲間として意識されているようです。

アラビア語で「サミード」と言った場合、粒が大きめの粗挽きのタイプを意味します。
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ざらざらとしています。
アラビア語のレシピで、「サミード」と出てきた場合は、普通はこのざらざらのセモリナ粉を使います。
しかし、ややこしいことに、サラサラの「タヒーン・ファルハ」を「細かいセモリナ(サミード・ナーイム)」と呼ぶこともあります。

今のところ、日本の一般的なお店(富澤商店など)で、ざらざらのセモリナ粉は見かけません。私はインドやパキスタンなどの食材を扱うお店で購入しています。いわゆるハラールショップですね。インドではセモリナは「スージ」などと呼ぶようです。逆に、ハラールショップでさらさらタイプのセモリナ(タヒーン・ファルハ)は見かけません。

改めて並べてみると、粒の大きさが全く異なることがわかります。
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左端は薄力粉、真ん中は日本のセモリナ粉、右端は日本のハラールショップで購入したバングラディシュ産のセモリナです。
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元々、セモリナとは、粗挽きの状態の粉のことを指すようで、必ずしもデュラム小麦である必要なないようです。しかし、現在では(少なくとも日本では)なぜか、デュラム小麦の粉をセモリナと呼ぶようです。
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色の違いですが、これは、おそらく、日本のセモリナ粉はデュラム小麦なのに対し、バングラディシュ産のセモリナは、普通の小麦を挽いているものと思われます。シリアやエジプトなどのセモリナも、白っぽいものから黄色がかったものまで、いろいろあるように思います。

タヒーン・ファルハは、主に、シリアやレバノンでよく使われ、エジプトでは全く使われていません。私がエジプトに住み始めた2012年、当然どこでも売っていると思っていたタヒーン・ファルハが、全く見つからず、お店の人に聞いても「知らない」と言われたことを記憶しています。そのため、時々行くレバノンで買っていました。エジプト在住30年ほどのシリア人の友人は、エジプトにはタヒーン・ファルハはないから、普通のセモリナ粉と小麦粉を混ぜて使っている、という話を聞かせてくれました。
もっとも、ここ数年は、シリア人がエジプトに増え、シリア食材店もあちこちにできたので、そういったお店で買えるようになりましたが。

タヒーン・ファルハは、主に、マアムールを作るときに使います。ざらざらのセモリナ粉で作るマアムールも一般的ですが、私がダマスカスでお世話になったお菓子工房は、タヒーン・ファルハを使っていたし、先述したエジプト在住シリア人も生粋のダマスカス人、その他、ダマスカスで教わったり、食べたりしたマアムールはタヒーン・ファルハを使った、きめの細かい生地のマアムールがほとんどでした。
ちなみに、普通の小麦粉のマアムールも一般的です。セモリナ粉のビスケット=マアムール、とかでは決してありません。

このさらさら、ざらざら、二種類の「セモリナ粉」、単純に置き換えて問題のないレシピもありますが、当然仕上がりの食感は異なります。特にバスブーサはざらざらタイプのセモリナ粉で作る必要があります。レシピによっては(特に焼き菓子)、生地がべたついたり、扱いずらくなる、ということもあり得ます。お菓子作りあるあるですね。アラブのお菓子のレシピで「セモリナ」と出てきたら、いったん落ち着いてどちらのセモリナか検討しましょう。

このセモリナトラップ、セモリナ粉として認識しているものにずれがある故、アラブ人に聞いてもなかなか明確な答えが得られないどころが、話がかみ合わなく、割と長い間悶々としていました。そんなことがセモリナ粉に限らずいくつもあるのですが、それをひとつづつ整理していくのも面白いものです。






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