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エジプトのパンプディング「ウンム・アリー」


数あるアラブのデザートですが、エジプト特有のものとなるとまず思い浮かぶのが「ウンム・アリー」。

アリーのお母さん、という意味のこのデザート。アリーはアラブ人やイスラム教徒の男性によく使われる名前です。


パイ生地やクロワッサン、バクラワに使われる極薄生地のフィロペストリー(エジプトではグッラーシュ)などの生地にミルクを注いでオーブンで焼いた、パンプディングのようなデザートです。


「アリーのお母さん」なんて聞くと、息子アリーのために、母親が愛情込めて作ったデザート、なんて、どこかほのぼのとしたストーリーを想像してしまいますが、実はこれ、何人もの人が殺害されて誕生した、ある女性の執念と嫉妬のデザートなのです。


そんなストーリーは後にして。

まずは材料と作り方です。


材料

クロワッサン…1個(50g)

牛乳…100cc

生クリーム…50cc+50cc

砂糖…大さじ2


★ココナッツ

★レーズン

★ナッツ

★シナモン


作り方

①クロワッサンは一口大にちぎり、オーブン用の深皿に入れる。好みで★を表面に散らす。


②鍋に牛乳、クリーム50cc、砂糖を入れ、砂糖が溶けるまで弱火で温める。①にかける。


③残りのクリームを泡立てる。②の表面に塗り、砂糖(分量外)を振りかける。


④180度に予熱したオーブンで表面に焼き色が付くまで(15分程度)焼く。


一般的にウンム・アリーは温かい状態で食べますが、常温、又は冷やしてもおいしいですよ。

今回のレシピでは、クロワッサンを使用しましたが、冒頭でも説明したように、パイ生地などで作るレシピもあります。

冷凍パイ生地を使用する場合は、一度焼いてから、フィロペストリーはそのまま、それぞれ一口大にちぎって使います。

ちなみに、クロワッサンを使用したのは、日本でも作りやすいように…、と言うわけではありません!エジプトでもクロワッサンを使ったレシピは一般的です。


上に載せるクリームは、今回のレシピで使ったホイップクリームの他に、クロテッドクリームや、コンデンスミルクなども用いられます。


・ウンム・アリーの誕生秘話

この話の主人公となるのはシャジャル・アッ=ドゥッルという女性。

彼女の死を祝い誕生したのが「ウンム・アリー」です。


彼女はアイユーブ朝の君主サーリフの妾から正妻になり、後にマムルーク朝の初代カリフになる人物です。

シャジャル・アッ=ドゥッルはサーリフの急死後、その事実を隠し自ら軍を動かしマンスーラの戦いを勝利に導くほどの人物でした。

サーリフの急死後、彼の息子(母親はシャジャル・アッ=ドゥッルとは別の女性)のトゥーラーン・シャーがアイユーブ朝のスルタンになりますが、継母であるシャジャル・アッ=ドゥッルと仲違いし、彼女に殺害されてしまいます。

シャジャル・アッ=ドゥッルを女性スルタンとしてマムルーク朝が始まります。

しかしながら、女性のスルタンというのは一部で反感が強く、シャジャル・アッ=ドゥッルは最有力軍人アイバクと再婚し、アイバクにスルタンを譲ったのです。

再婚の際、アイバクには妻と息子アリーがいたのですが、シャジャル・アッ=ドゥッルは離婚させます。

スルタンをアイバクに譲ったものの、シャジャル・アッ=ドゥッルはその権力とサーリフの遺産を手放さず、アイバクとも次第に仲違いしていきます。

アイバクがモースルのアミールの娘と婚姻関係を結んで同盟しようとしている計画を知ったシャジャル・アッ=ドゥッルは、自分の地位が脅かされる危険と嫉妬で、アイバクを殺害してしまいます。

アイバクの暗殺後、シャジャル・アッ=ドゥッルはアイバク側にとらえられ、殺害されてしまいます。この殺害は、アイバクの息子アリーの母であり、アイバクの元妻が直接関わったと言われています。

シャジャル・アッ=ドゥッルの死を祝い、生地にナッツとミルクをかけたデザートが町の人々に振舞われました。人々はどういう経緯でデザートが振舞われるのか疑問に思いましたが、「ウンム・アリー(アリーの母)!、ウンム・アリー!」と説明されるにとどまりました。それがこの美味しいデザートのお話です。









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