エジプト料理で代表的な物を挙げるとすれば、絶対に外せないのがモロヘイヤ。
もうすっかり日本でもおなじみのモロヘイヤ、エジプト原産で、ちょっと粘りけのある野菜です。
シリアでは乾燥したモロヘイヤを煮浸しのようにして食べますが、エジプトでは細かく刻んでスープでのばして食べます。
どろっととろみがあり、一見癖がありそうですが、ご飯にかければするすると雑炊のような感覚で、食欲のない時期にもおすすめ。
作り方はいたってシンプル。刻んだモロヘイヤをスープに溶かし、タアレイヤと呼ばれるニンニク油をじゅっと加えるだけ。刻んだモロヘイヤがあれば味噌汁を作る感覚で作れます。
材料
モロヘイヤ(葉)…250g
チキンスープ…500cc~
ニンニク…大粒3片
ドライコリアンダーシード…大さじ1~
澄ましバターまたは油…大さじ2
塩、こしょう
作り方
①モロヘイヤは葉をちぎり、よく洗い、水気をしっかり切る。粘りが出るまで刻む。
②チキンスープを沸かし、刻んだモロヘイヤを加える。ダマにならないように絶えずかき混ぜる。濃いようならスープを継ぎ足し、濃度を調整する。10分ほど弱火で火を通す。
③ニンニクをみじん切りにする。もしくはすり鉢などにドライコリアンダーシードと一緒に入れすりつぶす。塩を一緒に入れると潰しやすい。
④フライパンに澄ましバター、潰したニンニク、ドライコリアンダーシードを入れ、ゆっくり加熱する。
⑤熱いモロヘイヤにニンニク油をジュッと加える。
作り方は簡単ですが、いくつかポイントがあります。
モロヘイヤは長時間煮込みません。スープに入れたらしっかりかき混ぜ、ダマをなくし、再び沸いてきたら弱火にします。
モロヘイヤをあらかじめ少量のスープでのばしておくと、溶けやすいです。
ニンニク油(タアレイヤと呼びます)をモロヘイヤに入れる時は、タシャーっと音がしなければなりません。この音から、タッシャと呼ばれます。香りを封じ込めるため蓋を30秒程度する人もいます。
ただし、モロヘイヤが熱いうちに蓋をしたままにすると、モロヘイヤが分離します。蓋をするのは完全に冷めてからにしましょう。
トマトのみじん切りを炒めたものを加えたり、パクチーを加えたりすることもあります。
分量ですが、これはモロヘイヤの状態、個人の好み、いろいろあるので、好みの濃度を調整してください。
モロヘイヤ250gだと、スープは500ccから1リットルぐらいが目安でしょうか(だいぶ幅がありますが…)。
タアレイヤの分量も好みに応じてもっと増やしてもよいです。
※追記
日本では、スーパーで市販されているモロヘイヤ1パックの葉をむしると50g前後になることが多いです。今のところスープ500㏄に対して2パック分(正味100g程度)のモロヘイヤがちょうどいいと感じています。ちなみに重量は洗う前の重さです。
・モロヘイヤの下準備
エジプトでは刻んだモロヘイヤが冷凍で売っているので、これを使えばあっという間にできますね。
茎付きのモロヘイヤを使う場合は、葉をむしります。茎は使いません。
葉をむしったらしっかり洗い、水気を完全に乾かします。
マハラタと呼ばれるナイフで刻みます。
最近はフードプロセッサーで刻む人もいるようです。
粘りが出るまで刻みます。ただし、粘りといっても納豆のように糸が伸びるわけではありません。
モロヘイヤの保存方法はいろいろありますが、一番簡単なのは刻んだモロヘイヤをラップなどで密閉して冷凍する方法です。そのままでもいいし、スープを少し加えておくと、使用するときに簡単に溶け、ダマができにくいです。一回分づつに分けて保存すると使いやすいですね。
・使用するスープ
モロヘイヤに使用するスープは、主に家禽類のスープを使用します。
そのなかでもウサギはモロヘイヤにあわせて好んで使われます。高級レストランではウサギのモロヘイヤがたいてい置いてあります。
家庭ではチキンは最も手軽で、よく使われています。
鶏肉、玉ねぎ、シナモンスティック、ベイリーフ、カルダモン、クローブ、塩を水から茹でます。好みの部位でいいですが、一羽丸ごとや骨付きだとよりおいしいスープが取れますよ。
茹でてスープを取ったチキンなどは、表面にトマトペーストなどを塗りオーブンで焼いたり、そのまま(またはむしって)モロヘイヤに入れます。
もちろん牛肉などのスープでもおいしいです。
その他、マギーなどのスープの素を使うと、手軽に安くモロヘイヤが作れます。
濃いめのしっかりしたスープを使うとおいしく仕上がります。
・モロヘイヤはスープではない?
その見た目から、日本語では「モロヘイヤスープ」と呼ばれることもあるモロヘイヤ。実はスープではありません。あくまでもメインの料理です。
そのためレストランのメニューにはスープ欄にモロヘイヤはなく、アラビア語でも「モロヘイヤスープ(ショルバ・モロヘイヤ)」とは普通は言いません。(ネットで検索すると、そういう言い方をしている場合もありますが…)。
エジプトでショッキングだった出来事の一つに、団体観光客が多いレストランでのモロヘイヤがあります。
小さなボールにうっすーい澄まし汁のようなモロヘイヤ(当然タッシャなし)が登場するという、なんとも悲しい出来事。
モロヘイヤの濃度については、個人差があるのですが、あそこまで薄いモロヘイヤを飲まされた旅行者は、そりゃ「スープ」と勘違いしてしまう。
でも、違うんです。モロヘイヤはスープじゃないんです。スープ風に提供される場合もあるけど、メインの料理です。
ちなみに、過去に私が書いたものを改めて確認したら…思いっきりスープスープと言っていました。そこらへんのツッコミは何卒ご容赦くださいませ。
・上エジプトの冷たいモロヘイヤ
エジプトでは上記のような食べ方が一般的ですが、上エジプトでは「シャラウラ」という、冷たいモロヘイヤも食べられています。
作り方は乾燥の粉状のモロヘイヤに冷水を混ぜるだけ。玉ねぎ、ニンニク、レモン汁、唐辛子等で味付けします。
火を使わず暑い時期でもすぐ食べられる、これこそが、ファラオの時代から食べられてきたモロヘイヤという声もあります。
また、動物性の材料を使わないことから、キリスト教徒の断食の時にも食べられるんだとか。
・モロヘイヤのアレンジ
レストランのメニューで目にする「ターゲン・モロヘイヤ」。
ターゲンとはオーブン煮込みのような意味で、オクラやジャガイモなどのトマト煮込みをフォッハール(単に陶器という意味ですが)という素焼きの器に入れてグツグツ焼いた料理です。
ターゲン・モロヘイヤは、オーブンでグツグツしたわけではなく、素焼きの器でタアレイヤを作り、スープをジュッと加え、モロヘイヤを加える方法で作ります。つまり作り方が逆なのです。でも器が熱々。
普通のモロヘイヤを素焼きの器に入れただけの場合もターゲン・モロヘイヤと言っている場合があるのですが、まあ、それもよくあることなので、その辺はあまり目を三角にしないようにしましょう。
モロヘイヤをファッタにする食べ方もあります。
ちぎったパンにスープやモロヘイヤをかけ、ご飯、モロヘイヤ、トマトソースをかけます。
海沿いの地域ではエビのモロヘイヤをよく見かけます。
1941年に発行されたアラビア語の料理本では、12種類ものモロヘイヤの料理法が紹介されています。
モロヘイヤの付け合わせには酢漬け玉ねぎが合います。
粗みじん切りにした玉ねぎに塩、酢を混ぜ、30分から一時間置くだけ。
フレッシュだけど辛みがおさまった玉ねぎになりますよ。