東京から飛行機で約3時間の近さのウラジオストク。巨大なロシアの東の端、シベリア鉄道の終着(始発)の駅がある、海沿いの町です。
旧ソ連の国にはこれまでにも結構行ったのだけれど、ロシアは実は今回が初めて。
旅行に出かけて、まず行きたい場所と聞かれたら、最初に思い浮かぶのが市場。
国によっては市場で買い物する習慣はもうほとんどなかったり、観光客向けになっていたりするのですが、ウラジオストクではまだまだ現役の模様。
有名どころは「キタイスキー市場」ですが、その北にある「ルガバヤ市場」に行ってみることにします。
キタイスキー市場方面からルガバヤ市場に向かう途中の道沿いにはフリーマーケットがあります。
規模はあまり大きくなく、フリーマーケット目当てで来るというよりは、通行人の方が多い様子。
道端に並べられた中古品を眺めつつ進むと、急に道が開け、交通量が多い通りに出ます。
ガラス張りのやや新しそうな建物の前を通りすぎると、ルガバヤ市場の入り口です。
人はさほど多くなく、活気ある市場というよりは、こぢんまりとした日常の市場という趣。
入り口こそ小さいですが、敷地はそこそこ広く、食料品以外にも雑貨や衣料品などもあり、一通りの物はそろいそう。
コンテナのような簡易的な建物がずらっと並びます。
中に入って品物を見ることができるお店もありますが、多くはショーウインドウ越しに買い物をするスタイルのようです。
かつてはこの市場のランドマーク的な建物だったのかな。
くたびれ具合が最高。
パン屋さんも窓口注文方式。
魚屋、肉屋、乳製品屋…。それぞれ決まった建物に入っています。
魚屋さんのブース。港町だから当然かもしれないけど、ウラジオストクの人は魚介をかなり食べるのではないかと思います。魚の頭は捨ててしまう国も多いように思うのですが、この町では頭だけ、という売り方も一般的なようでした。
奥にどんどん進むと、体育館のようなブースが。
広いがらんとしたスペースに、営業しているお店は数件。
静かな静かな空間。
この一角に、ひっそりと売られているのがウズベキスタンの食器。
ウラジオストクはウズベキスタン人が多く、彼ら相手の食堂なども至る所にあります。そしてそこで必ずと言ってよいほど使われているのがこの食器。小さいお椀はお茶用、大きい方はラグマン(うどんの様な料理)やスープ用。
スパイスも豊富。
市場などで、こういったスパイスを売っているのは、ロシア人ではなく、ウズベキスタン人やアゼルバイジャン人などが多いみたい。そうそう、プロフ(ウズベキスタンの炊込みご飯)用のミックススパイスなどもあります。お土産にも。
一旦市場を出て、路面電車の脇道を歩いていると…。
素敵な色あせ具合の食堂が。おお、これはウズベキスタン料理なのでは。どうやらお店は階段を降りた先で、薄暗く、中の様子はわからないのだけど、脂とスパイスのいい匂いがするではありませんか。
おそるおそる階段を降りてみると。
小さなスペースを板とビニールで簡単に囲った殺風景なお店。左の窓には個室のようになっています。
先客は一組。ウオッカなのでしょうか、ハードリカーをチビチビとやりながら、香草をつまんでいます。
グループのひとりは、どうやら親分的な存在のようで、どこからか、ひっきりなしに電話がかかってきます。
成功した人やその土地に長く住んでいる人が、同胞の世話をする、というのは、アラブでもよく見かける光景。と言うよりも、イスラーム的習慣なのかもしれません。
メニューなんてものはなく、お店のおじさんが今日あるものを教えてくれます。
ラグマンに、プロフ、そしてシャシュリクにサラダ。今日あるもの、と言うより、いつもある物、でしょうか。
まずはビールで。ウズベキスタン人はほとんどがイスラム教徒ですが、お酒はそこそこ飲まれているよう。そう言えば、アゼルバイジャンもそうだったな。
ウズベキスタンのパン「ノン」。少し塩味の、むっちり、ずっしり、重たいパン。引きちぎってスープに浸すとおいしい。私はかみ応えのあるパンが好きなのです。
そうしていると、ラグマンが来ました。ボールにすれすれ。こぼれそうなスープはトマトベース。そしてたっぷりの野菜。ディルが爽やかな芳香を放っています。
スープをこぼさないように野菜を食べ、やっと顔を出した真っ白な麺。うどんのようで非常に食べやすい。
ウズベキスタンと言えばのプロフ。人参と羊の炊込みご飯です。
余談ですが、夫が昔バックパック旅行で訪れたウズベキスタンで、とある一家に泊めてもらったそうです。次の日、ピクニックに行くぞ、と素晴らしく景色のよい山のほとりに連れて行かれ、家から持参した大鍋で、信じられない量の人参を、信じられない量の油で炒め、プロフを作ってくれたそうです。それがすこぶる美味しかったのだそう。
なるほど、確かにこれは人参と油が主役。肉でもスパイスでもない、独特の甘みと、しっとり感。そしてかすかな青臭い風味。
生の玉ねぎがしゃりっと、よい箸休め。美味しいな。
食後はお茶で。このあたりの国では、お茶は小さなお茶碗で飲むみたい。
ちなみに、お茶の表面が傾いているのは、床、と言うか、地面が傾いているからです。
そうそう、このお店、ルガバヤ市場からも直接入れます。知らんかったー。
ウラジオストクには、ウズベキスタン人を始めとするイスラム教徒が多く、規模はさほど大きくはないですが、モスクもあります。
ルガバヤ市場から北に歩いて20分程の場所にあるモスク。
普通のアパートの一階部分がモスクになっています。
日曜のお昼ということもあり、多くのイスラム教徒がお祈りに訪れていました。
モスクの人に話を聞くという夫を待つ間、モスク脇の小さな公園で遊ぶ子供を眺めながら、ベンチで一休み。
ラマダーンや、金曜日などには、モスクの前のウッドデッキのような場所にもびっしり礼拝者が集まるのだとか。白線はそのためかな。
モスクのイマームと話したという夫曰く、イマームはエジプトのアズハルで学んだという、きれいなフスハーを話す若い青年。彼と話している最中、尊敬の眼差しをした子供達に囲まれた、と満足げ。
モスクの偉い人と何やらアラビア語で話す謎の外国人。確かに子供にとっては気になる存在ではありますな。