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ヌビアのフュージョン料理教室に参加してみた

更新日:2022年3月8日


エジプトでは、料理とはお母さんから教わるもの…、という習慣は過去のものになりつつあるのかもしれません。というのは大げさですが、ここ数年で、料理教室の開催が目立つようになったのは紛れもない事実でしょう。

格差の激しいエジプトで、もはや“エジプトでは”という表現は殆ど意味がなく、このような料理教室に参加したり、興味を持つ層というのも限られてくるのですが、それでも料理をわざわざお金を払って習いに行く、エジプト料理とは違う料理を家でも作りたい、という人が増えるのは食文化の発展において大きな変化を生むことは間違いなさそうです。

と、堅い話をしましたが、実はエジプトで料理教室に参加したことがない私。もっぱら料理上手の知り合いに教えてもらっていました。

料理教室に興味はあったのだけれど、タイミングが合わなかったり、う~ん、アレンジ料理かぁ、なんていうレッスンが多かったり。授業料も安くはないしね。

そんなこんなで、今まで何となく参加する機会を失っていたのです。

ところが一念発起。3月某日。カイロから車で3時間程の地中海沿岸の町アレキサンドリア。ここで「ヌビア料理」のクラスがあると聞いて、早速参加してきました。

朝5時のバスでカイロから向かいましたよ~。

今回はヌビア出身の先生によるヌビアンフュージョン料理。伝統的な料理に先生独自のアイデアが面白い。エジプトの他、マレーシアでも料理を学んだのだとか。

まずはデザートの仕込み。

タヒーナのブラウニーです。

ブラウニー生地にタヒーナを混ぜ込み、表面にもタヒーナ。金串でマーブル模様を付けます。

黒蜜クリスピー(ムアルメシャート・アサル・イスワド)は、上エジプトの素朴なお菓子「ジャッラーブ」の家庭版。砂糖と黒蜜、重曹を熱して型に流し込みます。

ジャッラーブはブーケ型をしていますが、ほうほう、これだと家でも簡単にできます。

ブラウニーをオーブンに入れ、早速料理に取り掛かります。

イワシのパイ(フティーラ・サルディーン)は、イワシでフリークを包んだ料理。

開いて骨を取ったイワシに、ヌビアンスパイスミックス、塩、こしょうをまぶします。

ピーナッツ、干しぶどう、フリークなどを炒めます。

バターのいい香り。

丸形にイワシ、フリークを詰めます。型はオーブンに入る物なら何でもOK。今回は小さな銅鍋を使いましたが、エジプトでよくある素焼きの器でもよいとのこと。

フリークを完全にイワシで覆い、オーブンに入れます。

焼き上がったらハーブクリームをのせて。お皿にひっくり返して盛り付けてもかわいいです。

ハーブクリームはバターよりも軽く、ミントやレモンの皮がアクセントでめちゃくちゃおいしい。

フィッシュボールのタマリンドソースは、柔らかなフィッシュボールと甘酸っぱいソースが絶品でした。

ナイルパーチとイワシのつくねをタマリンドベースのソースで煮込みます。

どっさりのニンジンの千切りをのせてオーブンへ。

仕上げにはハーブのサラダをのせて。

オーブンに入れる前でもおいしいけど、このニンジンのシャキシャキとした歯触りが何だか心地よい。そしてハーブサラダのさっぱりとしたそよ風。ボリュームはあるのになぜだか軽い。これはパクパク食べてしまう。

あさり?フライ(ガンドフリー・マクリー)はあさりのむき身にチーズを主体とした詰め物をサンドして揚げた料理。おつまみにぴったり。

中身はちょと予想外の物だったのですが、これがなかなか合う!

これをあさりの上に絞り出して別のあさりを被せて、軽く握って形を整えたら“天ぷら生地”に浸けて揚げるだけ。

この“天ぷら生地”(アギーン・タンブーラ)、先生はタンブーラ見たいな発音をしていたので、「初めて聞いたな。ヌビアのパンか何かかな?」なんて思っていたのですが、天ぷらかい!

そう気がついてから、日本の天ぷらの事を聞かれた場合の答えをイメトレしていたのですが、全く聞かれませんでした。ああ、もう、テンプラは日本を飛び越えて世界の言語になったのね。でも、個人的にはこういう状況で、「外国人」や「日本人」ということを意識されるのはあまり好きではないので、気は楽。

それはさておき、さっぱりしたレモンドレッシングをかけて完成。

スシのように盛り付けましょう、と先生が言っていました。スシ!と思いましたが、そこでしゃしゃり出ないタイプの人間です。私は。

乾燥肉のファッタは何もかもが予想外。

使うパンはいつものアエーシュではなく、ファーイシュ。

ファーシュとは、ターメリックが入った黄色いパン。パン屋ではスライスして2度焼きしたラスクのような状態で売っています。上エジプトのパンですが、カイロでも普通に見かけますよ。

今回のファッタは、2度焼き前のファーイシュを一口サイズに切り、バターで軽く炒めて使います。

肉は乾燥肉。カイロでは見かけませんが、アスワンなどでは市場などでも売っているのだそう。

歯触りは完全にサクサク、油の部分もサクサクなのですが、口に入れてすぐに溶けるような感触は不思議です。

トマトベースのソースには、スイートチリソースを少々。

どうやっても垢抜けないエジプトのファッタが、こんなおしゃれになりました。

とろみのついたソースに、表面がカリッと、中はバターの風味のパンが絡んでおいしい。

最後の料理はレンガのカルパッチョ。

レンガとは、ニシンの燻製。シャンム・ナスィーム(春香祭)の食べ物として知られていますが、年中売っていますよ。

このレンガのフィレを叩いて薄くのばし、セルクルで丸く抜きます。

黄色いソースはパプリカのグリルとファーイシュをピューレにしたもの。

サラダを添えて完成です。

塩っ気が強いレンガですが、薄くのばすと何だかマイルドになる。

これはなかなかよいアイデアです。

そうそう、最初に準備したデザートですが、こんな風になりました。

黒蜜クリスピーは固まって、手で簡単に割れます。

濃厚な甘みとスポンジのような軽い食感。サクサクおいしー。

切り分けたブラウニーにみかん風味のクリーム。クリームはただのホイップクリームではなく、クリームチーズをブレンドしてあるので、これだけでデザートにもなりそう。

砕いた黒蜜クリスピーを振りかけて完成!

ボリューム満点のデザートプレート。チョコとオレンジは相性抜群なのは言うまでもなく。黒蜜クリスピーはしっかり甘いけど、食感もよいので、この技は重宝しそう。

11時から15時までの予定が17時半頃まで伸び、レッスン後は軽い疲労と達成感。

エジプトらしいハプニングもチョイチョイありましたが、充実した一日でした。

中でもヌビアのスパイスミックスは、普段カイロで使うスパイスには使われない物も入っていて興味深い。

これを知ることが出来ただけでもカイロから遠征してきてよかったです。

そう言えば、カイロ以外の人は、カイロのことを「マスル(エジプト)」と言うのですが、そのことを知っていても不意に言われると一瞬戸惑うのです。

「今日はエジプトの戻るの?」

はい、またこれから3時間かけて「エジプト」に帰りますよ!

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