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あるイフタールの風景

更新日:2023年2月9日


多くのイスラム教徒日中断食しているラマダーン月。夕暮れの時間が近づくと、なんとなく街がソワソワし始めます。家路を急ぐ人々を乗せてトゥクトゥクは猛スピードで路地を駆け抜け、ガラガラとシャッターを下ろすお店、デリバリーのバイクもこの時間は大忙しです。一方で、何でもない顔をして洋服なんかを物色しているおばちゃんも意外といたりで(なぜ今?と思ったりしますが)、大都会のカイロでは、例えばダマスカスのように人気がなくなる、ということはありません。

そんな日没前~直後のあるカイロの様子です。撮影場所は、我家の近くの商店街で人通りは常に多いですが、遠方からわざわざ来る場所でもない、いたって普通の商店街です。

日没直前には、飲み物やデーツを配る人達がいます。一種の施しの精神からくるものと思われますが、街ゆく人々も気軽に受け取っており、神の食堂のように「私は施される側ではないから」という雰囲気もないようです。

日没を知らせるアザーンがなると、静かに飲み物を口にしたり、タバコに火を付けたり。このときばかりは、いつもは騒がしいカイロもちょっと静けさが漂います。

カイロではよく見かける鶏屋さん。お店の前にゴザを敷いて、この日はモロヘイヤのようです。ちなみにこういう鶏屋さんでは、生きた鶏をその場で絞めてもらえます。その、新鮮なレバーと砂肝はもう絶品!急いで家に帰ってまだ温かいレバーを塩こしょうでささっと炒めて。レバーが苦手な人も絶対好きになりますよ!

靴や帽子など、オシャレアイテム屋さんは、写真をお願いすると、今日は肉が多い食事だからいいよ!と冗談交じりで快諾。

小さな食料品店は、食事中もお客さんがちらほら。もう殆ど食べちゃったけど、と誠実そうなお二人です。

洋服屋さんは左の男性がオーナーのよう。大きなターゲン(オーブン煮込み)が日没後10分でほぼ空っぽでした!

若者グループはテイクアウェイのグリル。韓国人?インドネシア人?こっちのセルフィーも一緒に入ってよ!と、楽しそう。

エプロンのおっちゃんは、写真撮るなら着替えた方がいいかい?と。いえいえ、そのままで!こちらもモロヘイヤのようですね。やっぱり美味しいもんね、モロヘイヤ。

人通りが増えるイフタール後にそなえて、皆さん、しばしの休憩ですね。

別の日ですが、レストランにも行きました。

カイロの吉祥寺「ドッキ」にある、イエメン料理のお店。ちなみにリンク先とは違うお店で、吉祥寺に関してはカイロ在住の日本人の友人知人の同意度は五分五分です。

ラマダーン最終週ともなると、どこのレストランも予約でいっぱいですが、一緒に行ったエジプト人の友人は、1時間ぐらい前に付けば予約ナシでもなんとかなるのよ、2人位なら、と、早く着いてよかったねー、と話す私に余裕の一言。

店内はラマダーンの飾り付けがされて、普段はテーブルの間隔が広くゆったりしているこのお店も、簡易のテーブルと椅子をその隙間に並べて、それでも満席で断られて帰って行く人もいるほど大混雑です。

こちらは評判のよい魚料理レストラン。お店の前にデデーンとテントが張られ、道にまでせり出した客席は、絨毯と白いクロスで、ちょっと結婚式場のようです。

ところで、エジプトではレストランで食べ残した料理を包んでもらって持ち帰るというのは普通のことなのです。大体何を頼んでも量が多いので、とってもありがたいシステムですね。

そして、その持ち帰りの料理を道などにいる貧しい人に渡す、というのもまぁ普通なのですが…。私は流石にそれには抵抗があり、まだ一度も自ら渡したことはありません。ねだられて渡したことはありますが。食べ残しを人様に渡す、お前はいつからそんなに偉くなったんだい?と言われているようで。もちろん、エジプトでは普通のこと、いいも悪いもないのですが。

この日は少し食べ残しがあったのですが、諸事情があり持ち帰ってもおそらく食べないであろう、ということで、残念ながら下げてもらうことにしました。いや、これこそ貧しい人に渡すべきなのだろうか、などと思っていると、レストランの前でティッシュを売っていたおばさんが駆け寄ってきて、我々のテーブルを片付けているウエイターに、「その残り物、くださいよ」と一言。

ウエイターは困惑した顔で、「いや…ちょっとここでは」と小声。おばさんも小声で「それなら後でもいいから」、ウエイター「ええ、まぁ…」、おばさん「どうも、悪いね」。

小声でのやりとりですが、もちろん全部聞こえています。こういうとき、「じゃぁ、包んであげて」などと言うのが正解なのでしょうか。

そうこうしていると、おばさんの元に駆け寄ってくる少年が。このおばさんの息子なのでしょうか。

少年「もう殆どお客さん帰っちゃったから、もういい?」

おばさん「バカ!まだ座っている人がいるだろ!お前はあの木のところにいろと言っただろ!」

おお、チームで戦っているのに、勝手に持ち場を離れてしまっては作戦が台無しです。それが許されるのはメッシ位なのでは。いや、あのぐらい実力と才能があれば、彼を中心とした作戦が立てられる…、などとぼんやりと考えているうちに、すっかり辺りは暗くなっているのでした。


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