トルコのピスタチオコーヒー
- arabfood
- 3月16日
- 読了時間: 5分

輸入食材を多く取り扱うスーパーをふらついていると、ちょっと珍しいものがありました。
ピスタチオコーヒーに、ディベックコーヒー、そしてオスマンコーヒー。どれもトルコ産です。
トルコでコーヒーと言えば、コーヒー豆を細かく挽いて、煮だして飲むトルココーヒーです。
かなり広い範囲の国や地域で飲まれていて、アラブ諸国はもちろん、ギリシャ、アルメニア、確かウクライナでも、最近はフィルターコーヒーや何とかラテなども広く知られるようになりましたが、コーヒーと言えばトルココーヒーが一般的です。
ちなみに、ギリシャではギリシャコーヒー、アルメニアではアルメニアコーヒーと呼びます。アラブ諸国ではアラブコーヒーではなく、そのままトルココーヒーと呼びます。「アラブコーヒー」は全く別の淹れ方をしたコーヒーなのでご注意を。
こちらが今回購入したピスタチオコーヒー。
パッケージには、英語で「ピスタチオコーヒー」とありますが、トルコ語では「メネンギチュ・カフヴェシ」とあります。

トルコ語でピスタチオは確かフストゥック。この呼び分けが気になります。
実は、この「コーヒー」に使われるのは、ナッツとして食べているあのピスタチオではなく、ピスタチオと同じウルシ科カイノキ属のテレビンノキという植物なのだそう。
トルコ語で動画を検索するといくつも見つかりました。
これがテレビンノキの実、すなわちトルコ語ではメネンギチュ。知っているピスタチオと全然違います。
これを炒って、挽いて、あとは普通のトルココーヒーと同じように小鍋で煮だして作ります。
挽いたメネンギチュはドロッとしていて、ペーストみたい。最近はこのペーストの瓶詰も売られているのだとか。そして、「ピスタチオコーヒー」は牛乳で作ることが多いよう。
早速作ってみました。
今回購入したものは、ほんの少し湿り気を感じるパウダー状。袋を開けるとふわっとピスタチオの香りがしました。

原材料は、日本語で「テレビンノキの実、砂糖、全紛乳」とあります。コーヒーが全く入っていないコーヒー。ちなみに、トルコ語や英語、アラビア語での原材料はこれに加えて固化防止剤も記載されていました。
アラビア語では、原材料欄にテレビンノキの実のことを「野生ピスタチオ」、作り方では正式名称の「ボトム」と書いてありました。この使い分け、何か意味があるのかな(今までの経験では特にない)。

ミルクと砂糖は既に入っているので、ひとまず水で作ってみました。ナッツフレーバーが入ったミルク入りのコーヒーのような、ココアのような。これでも美味しいけど、水の代りに牛乳で作る方が好みでした。より香りが引き立つような気がします。
ちなみに、このピスタチオコーヒー、アラビア語では「クルドコーヒー」と呼ぶみたいです。
次は「ディベックコーヒー」。
半額のシールが異様に目立ちますが…。

調べてみると、ディベックとは、トルコ語で臼やすり鉢のこと。なるほど、これらすり鉢で挽いたコーヒーを「ディベックコーヒー」と呼ぶのだとか。トルココーヒーよりも粉は粗目で、スパイスなどのフレーバーをいくつか加えているのも普通のトルココーヒーと違うところです。
トルココーヒーは一般的には砂糖以外の材料は入れないのが普通です。カルダモンを加えることがあるくらい。(最近ではチョコレートやバニラなどのフレーバ入りがわんさか発売されています)

計量スプーン入りで便利です。このスプーン1杯の粉と水70ccぐらいを小鍋に入れて煮だします。こちらも普通のトルココーヒーの手順と同じです。
原材料は日本語で「トルココーヒー、テレビンノキの実、コーヒークリーム、イナゴマメ、砂糖、マルトデキストリン、カルダモン、ココア、シナモン、食塩」です。添加物は省略しています。
トルコ語など、他の言語の材料欄には「トルココーヒー35%」、「テレビンノキの実5%」とありました。
普段のコーヒーよりもかなりマイルド。クリームやココアなどが入っているので当たり前ですが。これはコーヒーが苦手な人でも飲みやすいのでは。逆に、コーヒーの刺激を求めると、ちょっと物足りないような。

そして、カップの底に沈んだ粉が普通のトルココーヒーよりも少ないことに気が付きます。これはクリームが溶けているせいでしょうか。
最後はオスマンコーヒー。

先ほどのディベックコーヒーと同じメーカーのものです。
原材料は日本語で「トルココーヒー、テレビンノキの実、コーヒークリーム、イナゴマメ、砂糖、マルトデキストリン、ココア、シナモン、食塩」です。こちらも添加物は省略しています。
ディベックコーヒーとの違いは、オスマンコーヒーにはカルダモンが入っておらず、香料としてマスティクが入っていることです。
ただし、これはこのメーカーでの違いだと思われます。色々調べたのですが、この「オスマンコーヒー」の定義がいまいちつかめずじまいです。
手持ちの本でも今回の3種類のコーヒーをさらっと調べてみましたが、残念ながら見当たりませんでした。

全部は読めていませんが、該当しそうなページを当ってみました。
19世紀頃はコーヒーの値段が高騰し、コーヒー以外のものを混ぜたり、ひよこ豆やナッツの殻などを使った「偽コーヒー」が出回ったらしく、この中に「テレビンノキの実」に関する記載があることを期待しましたが、見当たりませんでした。
ちなみに、現在でも飲まれているチコリコーヒーは、このころコーヒーの代用として生まれたのだとか。
そして、ひよこ豆コーヒーも、2023年にトルコ特許商標庁に登録されたようです。
以上、トルコの、コーヒーじゃないコーヒーのお話でした。