
年中日差しが強くて暑いイメージのあるエジプトですが、実は冬はコートや暖房が必要なぐらい寒くなるのです。
そんな、寒い冬に食べたくなる料理の一つが「オルアース」。
オルアースとはタロイモのことで、無骨で巨大ないもがスークで山積みで売られています。

ででーん。オルアース。大きさはまちまちで、大きい物だと1キロ近くにもなります。
エジプト人のこのタロイモの食べ方は、「オルアース・ビ・サルク(スイスチャード)」、スイスチャードと一緒に煮込みのようにして食べます。他には、パン粉を付けて揚げたりすることもありますが、大抵はこの煮込みで食べるため、料理名で単に「オルアース」と言った場合、一般的にはこの煮込みのことを意味します。
冷凍でも、一口サイズのキューブに切り分けられたオルアースが売られています。丁寧に?刻んだスイスチャードとパクチーもセットになっているので、これがあるとオルアースの皮むきなんかから解放されて、めちゃくちゃ簡単にできます。
年中売っているオルアースですが、体が温まることから、冬のイメージがあるよう。
日本では、里芋とほうれん草や小松菜などで代用できそうです。
※以下の写真はスイスチャードの代わりにほうれん草を使用しています。
ほうれん草に関して、日本では、一度茹でてから使用しますが、エジプトではそのまま調理します。小松菜でも同様に作れますので、お好みで調整してください。
材料
タロイモ…500g
スイスチャード…120g
パクチー…30g
ニンニク…3 かけ
油…大さじ 2 牛肉…500g
玉ねぎ…少 1 個
カルダモン…2~3 個
ベイリーフ…2~3 枚
塩
作り方
① 牛スープを作る。肉は食べやすい大きさに切り、玉ねぎ、カルダモン、ベイリーフ、塩と共に柔らかくなるまで茹でる。カル ダモン、ベイリーフを取り除く。
② タロイモは皮をむき、1.5 ㎝角に切る。水で軽く洗い、ざるにあけておく。


③ スイスチャードは茎を取る。パクチーと一緒に細かいみじん切りにする(ミキサーを使用してもよい)。ニンニクもみじん切りにする。


④ 肉のスープにタロイモを加え柔らかくなるまで煮る。

⑤ フライパンに油(澄ましバター等)を熱し、スイスチャードとパクチーを炒める。しんなりしてき たら火を弱め、焦げないようにじっくり炒める。全体が黒っぽい緑になり、ポロポロ乾いた状態になる。 ニンニクを加え、いい香りがするまで更に炒める。


⑥ 炒めたスイスチャードをタロイモの鍋に加える。軽く混ぜ、更に 10 分ほど煮込む。塩味を調える。

タロイモの下処理の方法は様々です。洗わない、レモン汁をふりかける、塩をまぶして軽くこすり水で洗う、一度茹でこぼす、水で軽く洗う、水に浸ける、などなど、人人によって千差万別です。 私は水で軽く洗う方法で処理しますが、お好みの方法で構いません。
スイスチャードは包丁で細かく刻んでもよいし、ミキサーやフードプロセッサーでピューレ状にしてもよいです。
水分が多い場合はざるなどで濾して、残りかすを炒め、絞り汁は直接牛スープへ入れてもよいです。
この煮込みには、シャイリーヤ入りのごはんに合わせて食べましょう!
このオルアース、エジプトのコプト教徒の間では、クリスマスの後にやってくる公現祭(神現祭、主顕節、などとも)の食べ物としても知られています。
公現祭はについて詳しくは他のサイトで確認していただきたいのですが、簡単に言うとイエスの洗礼を祝う日。西方教会では1月6日ですが、コプト教など東方教会では1月19日となっています。
公現祭の食べ物としてはフランスの、小さな人形が入ったアーモンドクリームのパイ「ガレット・デ・ロワ」が日本でも有名ですね。
エジプトでは、先述の通りオルアース、そして、サトウキビ、オレンジなどがこの公現祭のシンボルです。
オルアースは生の状態では有毒ですが、(水で)調理すると栄養価が高い食べ物になります。また、地中で育ち、茶色い皮でおおわれていますが、調理の段階で皮をむき水で洗うことにより魅力的な食べ物になる過程が洗礼に似ているともいわれています。
サトウキビについては、ちょうどこの時期が収穫シーズンで、たっぷり水分が含まれていることから、やはり洗礼の水に連想されるとのこと。
オレンジは、食べるというよりも、実を取り除いて皮でランタンのようなものを作るようです。
お菓子では、ザラービアなどの揚げ菓子を食べるよう。
こちらも油に生地を落とし、油から引き上げるころには最初と違う形になっていることから、ヨルダン川での洗礼に連想されるようです。
ただし、これらの食べ物はイスラム教徒の行事、例えばラマダンや犠牲祭などの時のように、派手に売り出すという印象はありません。スーパーのチラシにオルアースが大量入荷!というようなことは見たことがありません。
エジプトでは少数派のキリスト教徒。この辺りは仕方がないことなのでしょう。