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エジプト 春の訪れを祝う「シャンム・ナスィーム」

更新日:2022年3月8日


春の食卓

2018年4月9日はエジプトでは春の訪れを祝う「シャンム・ナスィーム」でした。

アラビア語でシャンム=嗅ぐ、ナスィーム=そよ風と言う意味で、日本語では春香祭と呼ばれています。何だかとっても美しい翻訳。

これは、ファラオ時代から続くエジプト独特の習慣で、イスラム教やキリスト教など、現在の宗教とは無関係のお祭りです。

シェウム(Shemu)=収穫時期の創造の日、という古代エジプトの言葉が「シャンム・ナスィーム」の由来なのだそう。

その後、エジプトにキリスト教が入り、また、アラビア語が定着するなどの歴史の中で、現在の「シャンム・ナスィーム」に変化したとされています。

日付については、コプト教などの東方教会のイースターの次の日。

そのためこの週は金→土→日(イースター)→月(シャンム・ナスィーム)と、自動的に4連休となるのです(エジプトでは公的な休日は金曜日のみですが、金・土曜日が週末という雰囲気があります)。

この日は家族でピクニックに出かけたり、塩漬けの魚などを食べる習慣があります。

「シャンム・ナスィーム」の食べ物はいくつかありますが、代表的なのがこの「フィスィーフ」。ボラの塩漬けです。

ボラの塩漬けフィシィーフ

これがっ!すっごく臭い!実はエジプト人でも苦手な人はかなり多いようで、フィスィーフの話になると、オエーとオーバーなリアクションを取ったり、あれは生ゴミの匂いだ、などと、結構盛り上がる?のです。

でもエジプト人が5人ぐらいいると、フィスィーフ好きもいたりして、「あ、私、結構好き」と、しかも恥ずかしそうに名乗り出たりするのは、エジプトあるあるなのではないでしょうか。

この時期にはこんな画像をよく見ます。

エジプトの映画「アサル・エスワド」の一場面です。

この映画は、幼少期にアメリカへ移住した主人公が、十数年ぶりにエジプトを訪れるという物語。

映画の中ではシャンム・ナスィームの一日も描かれています。フィスィーフをめちゃくちゃ警戒していますが…。

実は私も数年前にフィスィーフを買ったことがあるのです。

……ちょっと無理でした。ホントに生ゴミの匂い。

パックを開けたとたん、強烈な臭いで呼吸困難になるところでした。

もう2度と買わない!と誓ったのですが、いや、アレは何かの間違いだったのでは、もう一度チャレンジしてみてもいいかも、魔が差し1匹購入。

フシーフ

軽く息を止めてパックをオープン。クンクン、あれ?臭くない。いや、もちろん匂いはしますよ。でも、前回のような耐えられない臭いではない。

フィスィーフは水分が抜けて、ちょっと固めの物がよい、なんて聞いたことがあるのですが、今回のはまさにそんな感じ。そういえば、前回のは異常にぶよぶよしていたような。

実はこのフィスィーフ、発酵が不十分だったり、単に腐ってしまったりで、食中毒も多く発生しているそう。妊婦さんは食べないで~、なんてお知らせも、この時期のフェイスブックなどでよく見かけます。

今となっては確かめようがないですが、前のは腐っていたのかな。

フシーフ

食べ方はウロコを取り、軽く洗って、お腹を開き内臓を取り出します。ぐわっと広げて、背骨を取り、レモン汁を絞りパンでつまみます。

冷静になってフィスィーフを味見してみると、うま味の塊!塩っ気が強いので、量は食べられませんが、美味しいじゃない!

ああ、でもこれからはエジプト人とフスィーフの悪口で盛り上がれないのか、と思うと、なんとも言えない気持ち。これが喪失感というやつなのか。

ちなみに、パレスチナのガザではフスィーフを揚げてトマトソースで食べるんだとか。

レンガ(リンガ)はニシンの燻製。こちらはフスィーフに比べると食べやすいです。いや、むしろ美味しいです。

燻製ニシン

レンガ

ガスコンロで表面を軽く炙って、皮をはいで食べます。今回は白子入り!

フィスィーフ同様、レモン汁を絞りパンでつまむ他、トマトやキュウリと混ぜてタヒーナで和えても美味しい。

ちなみに私はこのレンガで細巻きを作るのですが、エジプト人にとっては、レンガと米は絶対にあり得ない組み合わせ。必ずパンと一緒に食べるので、怪訝な顔をされます。

この他、鰯「サルデーン」や、カタクチイワシ「アンショーガ」、「メルーハ」などもあります。

春香祭特設売り場

これらの魚は年中売っているのですが、この時期になると特設売り場を設けていることもあります。

ボラの塩漬け真空パック

あ、フィスィーフはスーパーでは真空パックになっているので、エジプト土産にどうでしょう??

若いひよこ豆

ヒヨコマメの未熟な実「マラーナ」もこの日の食べ物として知られています。

が、どこにでも売っているわけではなく、エジプト人も食べたことがない人が多いよう。

ひよこまめ

青い実をそのまま食べます。

レタスや青ネギ、テルミス(ルピナス)、色づけされた卵もシャンム・ナスィームの食べ物として知られています。

レタスは一般的にはロメインレタスなのですが、最近は日本でも一般的な丸いレタス(アラビア語でカプーチー)も普通に見かけます。

レタスの根元の部分からしみ出す、白い液体がミルクに見えることから、生命の象徴だと考えられていたのだそう。

いつかの年にエジプト人の友人と行った会員制公園。

シャンム・ナスィームのカウンターがありました。レンガセットにカラー卵。

フィスィーフ持参で来ている人も大勢いました。

友人は「なんか臭いな…」とぶつぶつ言っていました。

イヤな人はホントに不快っぽい。納豆みたいなもの?

春の食卓

ピクニックには行けませんでしたが、我が家でもシャンム・ナスィーム!

本来なら、ネギを長いまま添えるのですが、買えなかったので冷凍しておいた刻みネギでお許しください。

シャンム・ナスィームのシャンムはそよ風みたいなさわやかなものではなくて、フィスィーフの匂いだ!と言っていたエジプト人の友人がいましたが、確かに。

うちの台所、今微妙に臭いです。


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