太っている女性は美しい。そんな時代は今は昔。世界中が健康志向になっている中、エジプトでもその波は確実に来ています。
経済格差や住む場所などで生活スタイルや考え方ががずいぶんと違うエジプトで、「一般」を語ることはもはや不可能なのですが、それでも私の周りのカイロっ子といえば日々ダイエットに励んでいる人は少なくありません。
ジム通いはもちろん、お茶には砂糖を入れない、食事はフルーツとサラダだけ、なんて話は日常会話となりつつあるのです。
若い人だけでなく、おばちゃんたちも例に漏れず。伝統的なサムナはコレステロールが高いから(値段も高いですが…)、うちでは植物油を使うのよ、と誇らしげに教えてくれたり、揚げ物を作ってくれたときは、天ぷらの衣を剥がして食べるがのごとく、キッチンペーパーで一つ一つ油を吸い取りながら食べたり。
ちょ、ちょっとどうしたんですかー!という太り方の人も多く、脚や腰を痛めたり、数年内にはエジプトは糖尿病患者数が世界一になる、なんて話も聞こえてくる中、ちょっとずつですが、人々の意識が変わっていくのは自然な流れなのかもしれません。
そんなある日、スーパーをうろうろしていると、こんな商品が。
グルテンフリーのバスブーサミックスです。
バスブーサとは、粗挽きのセモリナ粉のケーキにシロップを染みこませた、代表的なアラブ菓子の一つです。
ちょっとすっきりしたパッケージなので、てっきり輸入物なのかと思ったのですが、なんとエジプト産。おお、エジプトもやる気になったな、と謎の上から目線です。
材料は、米のセモリナ、トウモロコシのセモリナ、ショ糖、ベーキングパウダー、安定剤となっています。
これにヨーグルトとバターを混ぜてオーブンで焼いて、最後にシロップをかけて完成です。
バスブーサは複数のメーカーがミックスを発売していますが、それらと手順は全く同じです。
セモリナ粉はアラビア語で「サミード」というのですが、この商品の原材料欄にはサミードではなく、「セモリーナー・ルッズ(米のセモリナ)」と、英語をそのままアラビア語にして書いてありました。
そもそもセモリナ粉とは粗挽きの穀物を指す言葉のようで、デュラムコムギを指す言葉ではないようです。
ということは、アラビア語の「サミード」とは、粗挽きデュラムコムギのみを意味する言葉ということになるのでしょうか。
エジプトでは見かけませんが、シリアやレバノンでは小麦粉のように細かく挽いた「セモリナ粉」はサミードとは呼ばずに「ファルハ」と呼んでいたし。
そんなことを考えながら、粉を袋からだし、ヨーグルトとバターを加え、ちょっと柔らかめのクッキー生地のようなミックスを型に入れオーブンへ。
グルテンフリーなので、少々混ぜすぎても大丈夫なはず。
冷蔵庫に作り置きしていたシロップを少し温めて、焼き上がりを待ちます。
バスブーサはシロップをかけたら、アルミホイルで覆って火を消したオーブンに冷めるまで入れておくのがポイント。これでしっとり、ちょっとつやも出ておいしくなりますよ。
そういえば、シリアではバスブーサ(シリアだとハリーサ)を作るときは、型に油を塗る代わりにタヒーナを塗るんです。
まぁ、普通のバスブーサですね。街で売っているバスブーサよりシロップを控えめにしましたが、バスブーサです。
でもちょっと軽く、つぶつぶ感が普通のバスブーサよりも激しいです。
そして、コーンの風味がおいしい。これは普通のバスブーサにはないです。
エジプトにはビシーサというコーンブレッドがあるのですが、それよりもがつんと食べ応えがある焼き菓子に仕上がりました。
グルテン以外にもいろんな物がフリーで、なんとなく健康によさそう。
シロップがたっぷりなので、食べ過ぎは厳禁ですが、エジプトもここまで来てるのねー、となんだか感無量。
バスブーサの他にも、パンミックス、ケーキミックスなどたくさんあったので、試してみなくては。