オマーンは人口の半数近くが、移民や外国人労働者なのですが、オマーン人の中でも様々なルーツを持つ人がいます。
その一つが東アフリカなどからの帰還民。
1832年、現在のタンザニアのザンジバル島をオマーンが支配すると、多くのオマーン人が東アフリカに移住。その後、1970年代に帰還が始まり、人口が100万人にも満たなかった当時のオマーンに多くのアフリカ出身者が戻ってきたのです。
彼らの多くは現地アフリカ人との混血で、スワヒリ語や英語に堪能。オマーンの近代の発展に大きな影響力を与えたとのことです。
しかしながら、“オマーン生まれのオマーン人”は、彼らに対して偏見があるようなのです。生粋のアラブ人ではない、アラビア語が完全ではない、また、英語など語学に長けるなどで社会的に重宝されてきた事への嫉妬…。
彼らはオマーン人とは呼ばれず「ザンジバリー」と呼ばれる事もあると言います。文字通りザンジバリー人(実際には広くアフリカ出身者を指すようです)という意味なのですが、その中には差異的なニュアンスも含むようです。
もちろん服装、言語などの生活様式にも多くの違いがあります。食習慣もその一つ。
家庭でもオマーン料理でもなく、インド料理でもなく、東アフリカの料理を日常的に食べているようです。
参考文献 大川真由子、「帰還移民ー近代化を支えたアフリカ出身のオマーン人」、松尾昌樹編、『オマーンを知るための55章』、明石書店、2018年、220-223頁。
町にはインド料理ほどではないですが、ザンジバリーレストランがいくつかあり、他ではちょっと見られないような料理が食べられます。

その一つが「Africa Restaurant and Coffee Shop for Zanzibar」。

セルフサービスのお店です。

壁にメニューも貼ってありますが、作り置きのおかずを見て選ぶことが出来るので、未知のアフリカ料理でも安心です。

こちらはバナナの煮込み。
メニューにも「バナナ」としか書いてありませんでしたが、なるほど、バナナがどっさりの優しいシチューです。
バナナはいわゆるねっとりとした甘みは全くなく、一言で言うならイモ。
イモと比べると、デンプン質が少ないのか、若干さくっとした歯ごたえが加わりますが、言われなければ違和感なくイモとして食べてしまいます。
でも、形や断面なんかがバナナなので、脳が混乱する。

キャッサバの煮込み。
メニューには英語、アラビア語共に「ムホゴ」とありました。
ムホゴはどうやらスワヒリ語。アラビア語ではキャッサバはカサーファーなど、いくつか呼び方があるようです(私が生活したエジプトやシリアなどでは基本的にはキャッサバは食べないので実感としてはわかりませんが…)。
試しにメニュー表記通りのアラビア語「ムホゥーグー」で検索してみたところ…、たくさんヒットしました。やはりキャッサバでした。
肝心のお味は…。あ、サツマイモ。ちょっと甘くないサツマイモのよう。
ソースはクリームシチューのような慣れ親しんだ味。
バナナもキャッサバも意外と食べやすい。

定番のチャパティと一緒にいただきます!

スナックはサモサ(奥)と、カチョリ(手前)。
サモサは肉や野菜、イモなどの具を薄い生地に包んで揚げた定番スナックです。
今回はチキンのサモサにしました。
カチョリはインドなどだと、パン生地に具を包んで揚げたもののようですが、ザンジバルのカチョリは軽くスパイスで味付けしたマッシュポテトに、衣を付けて揚げたもの。絶対においしいやつです。
今回は揚げたてではないものの、イモのねっとりした食感と、先のシチューにはないちょっと変化のあるスパイスの味。うまいな、これ。
スナックにはチリソースとココナッツソースをお好みで付けながら。
気付けばイモばかり食べていました。

小綺麗な社員食堂のよう。
帰宅後、メニューを見ていると、この辺りでの主食のウガリなんかもありました。
あー、それも頼めばよかったなぁ。
料理を直接見て選ぶ方式だと、どうしても派手目の物を選びがち。
言葉がわかる場合は、メニューをじっくり見て注文する方がいいのかも。
冷凍のキャッサバが買えるようです。
煮込みにしたらおいしいかな。