
ほろほろとろけるショートブレッドのようなお菓子がアラブにもあります。
白くて繊細な、グライベ(グライバ、ゴライエバetc...)というお菓子です。
このお菓子の材料は3つだけ。小麦粉、粉砂糖、澄ましバター。
シンプルな材料で失敗もないので、家庭でもよく作られています。
ラマダーン後のイードなどにも欠かせないお菓子です。
(モロッコなどのゴリーバはアラビア語の綴りは同じですが、別のお菓子です)
イラクではシャカルラマと呼ばれており、カルダモンを加えることが多いのだとか。
(エジプトなどのシャカッラマは、これまた別のお菓子です)
アラブのお菓子は、基本的にサムナ(サムネ)と呼ばれる澄ましバター(ギー)を使用しますが、日本でサムナは手に入りづらいので、このブログではサムナの代りにバターを使うレシピを紹介してきました。
しかしながら、このグライベだけはバターで代用ができません。
多くのアラビア語のレシピを見ても、必ずサムナを使うように、と注意していることが多いのです。これは他のお菓子ではあまり見られません。
その理由は、バターだと使える小麦粉の分量が減ってしまい、独特のほろっと、ぼそっと感が出ないのです。
シリアに住んでいた10年前、何とかバターでできないかと何度も挑戦しましたが、食感を求めて小麦粉を多くすると成型がうまくできず。
苦し紛れにぎゅっと四角くまとめて焼いたりもしましたが、グライベの魅力は食感もさることながら、かわいらしいドーナツ型でもあるのです。

後に夫になる人物から、大量の四角いグライベもどきを「わー、消しゴム工場!」なんて言われたりもしましたが、それはともかく、バターではあまりいい結果にはならないことが分かりました。
バターはサムナに比べて不純物が多いので、油分が抱えられる粉の量が減ってしまう、というようなイメージでしょうか。
ということは、油分が100%の植物油で作ればいいのでは。
早速我が家にある普通のキャノーラオイルで試したところ、これが大成功。
サムナで作った方がおいしいはず、と思っていましたが、いやいや、植物油の方もあっさりして、私はこっちが好みかな。
材料
小麦粉…120g
植物油又はサムナ…50g
粉砂糖…30g
ピスタチオ(好みで)
作り方
①植物油又はサムナに粉砂糖を加え、よく擦り混ぜる。
②ふるった小麦粉を加え、よくこねる。
③生地を20等分(又は好きな大きさ)に分け、棒状に伸ばして折り曲げる。
好みでピスタチオを飾る。丸めて軽くつぶしてもよい。

④150度に予熱したオーブンで15分ほど焼く。

焼き上がりは多少膨らみます。
色は付けない事が多いですが、お店によっては軽く焼き色を付けていることもあります。
焼きたては柔らかく崩れやすいので、そのまま天板の上で冷ましてください。
1~2日経つと、表面が固まって落ち着いてきます。
小麦粉の量は油に対して2倍が目安です。
べたつかず、つるんとした生地になるように調整してください。
・サムナについて
バターから不純物を取り除いたものがサムナ(サムネ)。

常温で保存でき、風味もよく、アラブ・中東地域では料理にお菓子に欠かせない材料です。

どの家庭にも常備されていると言ってもよいくらいなのですが、実はこのサムナ、かなり高価なもの。
そのため、植物油からできたサムナなども主流で、メーカーにもよりますが、動物性のサムナと比べ、5分の1程度の値段で買うことができます。
動物性サムナを使ったお菓子は、そこそこのお値段のするお店に限られて、安価なお菓子には殆ど使われていないのが現状ではないでしょうか。
エジプトでは、「100%サムナ使用」というのがお菓子の売り文句になっており、また、私がお世話になったダマスカスのお菓子工房ではショートニングを使っていました。
日本でも輸入物などのサムナが販売されているようですが、純粋な動物性サムナと、混合サムナとでは、当然のことながら値段がかなり違うようですね。