【レバノン】アラブの青カビチーズ「シャンクリーシュ」を求めて


アラブ中東地域には様々なチーズがありますが、多くは豆腐のような形をしたフレッシュチーズ。しかし、アラブのロックフォールチーズと呼ばれる青カビのチーズもあるのです。その名は「シャンクリーシュ」。

テニスボールぐらいのサイズで、表面にはザアタル(タイム)やパプリカをまぶしてあります。後述しますが、表面の緑色はカビではありませんよ。

主にシリアやレバノンで生産されており、シリアの地中海沿岸(ラタキア、タルトゥースなど)や中部の町ホムス、レバノンだと北部のアッカール県が特に有名です。

このチーズはリコッタチーズやカッテージチーズののような「アリーシュ」と言うチーズから作られます。 アリーシュを布袋に入れ水分を切り、塩を加えます。好みで粉唐辛子を加えて辛みを付けます。 テニスボールぐらいの大きさに丸め、3日から5日ほど乾燥させ、その後素焼きの壺に入れ1か月ほど寝かせます。表面に青かびが生えていたら熟成期間は終了。 水でカビを洗い流して、好みのハーブやスパイスをまぶして完成です。

使用されるミルクは、牛、羊、ヤギで、それぞれ違った風味のシャンクリーシュができます。

カビの独特の匂いと、ピリッっとした風味が特徴のちょっと大人向けのチーズです。

カビは表面のみに生えるので、基本的には中は白いまま。加える唐辛子の量によっては赤っぽいものもあります。

カッテージチーズが原料なので、脂肪分が少なく、また乾燥させるという工程を経ているので、ぼろっとした食感。オリーブオイルをぐんぐん吸い込む感じです。

食べ方はいたってシンプル。適当なサイズにほぐしてオリーブオイルをかけたり、トマトや玉ねぎなどと和えてサラダにしてパンでつまんで食べます。

シャンクリーシュはカビを付けて熟成させたチーズなのですが、その工程を省いた、つまり、水切りアリーシュを丸めてザアタルをまぶしたチーズも同様にシャンクリーシュと呼ばれます。特に呼び分けたい場合は「スールケ」と呼びます。

シャンクリーシュという名前はアラビア語の響きとは少々異なることに気がつきます。

一説によると、「シャン」はクルド語で「素焼きの壺」、アリーシュは古いベドウィンの言葉「カリーシュ」で発酵したミルクを意味し、その言葉が合わさってできたと言われています。「シャン」はアラビア語の「皮でできた袋」からきたという説もあります。

シャンクリーシュは現在シリアやレバノン全土で作られ、消費されていますが、レバノンはアッカール県の「ラハベ」という村にこのシャンクリーシュ作りの名人がいるとのこと。さっそく訪ねてみました。

写真左の女性が名人のワッダードさん。

残念ながらこの日はシャンクリーシュ作りはしていませんでしたが、旬のぶどうの葉を保存するための瓶詰め作業をしておられました。

ぶどうの葉は茹でて冷凍したり、塩水につけて保存することが多いですが、生のまま瓶にギュウギュウに押し込んでテープで密閉しておく方法もあります。

シャンクリーシュは現在でも個人や家族などの小規模で生産されていることが多いようですが、ワッダードさんも例にもれず、こぢんまりとした工房です。

工房の隅には熟成中のシャンクリーシュが。カビがぽつぽつ生えています。

ワッダードさんは、牧草を食べて育った牛のミルクのみを使用。もちろん近所で飼育している絞りたてのミルクです。

入れる唐辛子の量で主に3種類のシャンクリーシュを作っているとのこと。

唐辛子大目の「ハール・ハール」。辛辛とでも訳しましょうか。

標準タイプの「ヌス・ハール」。半辛ですね。

そして唐辛子を入れない「ゲイル・ハール」。唐辛子ぬき。

カビつきを試食させもらいました。オリーブオイルをたっぷりひたして。

結構がつんときますな。シャンクリーシュは今まで何度も食べましたが、カビの風味が強烈。でもクセになる。チビチビとパンでつまんで。ワインに合うな。

ワッダードさんのシャンクリーシュは、レストランや一般商店などには卸していないそうです。ここでしか買えない貴重品。シャンクリーシュなんてどこでも買えるでしょうに、と思いますが、ちょうどよいモロモロとした食感と、マイルドすぎないカビの風味、いやはや名人のチーズはやはりひと味違うのです。

そうそう、新鮮な地鶏の卵もいただいてしまいました。

そーっとそーっと、割らないように気をつけて持ち帰り、シンプルにゆで卵で食べます。

うまー!っと思わず叫んでしまうおいしさ。塩、ほんのちょっとだけで。黄身はほくねっとり、白身もしっかり濃厚。なんか黄身が大きいし。

ラハベまでの道のりの途中で「ラハム・ビ・アジーン」を食べました。

ひき肉とトマトのみじん切りをパン生地にのせて焼いたもので、レモンを搾って食べたり、野菜やハーブをクルクル巻いて食べたり。トルコだと「ラフマジュン」と言いますね。ヨーグルトドリンクのアイランがめちゃくちゃ合いますよ。

レバノンは何でもおいしいですが、私は特にこれが大好きで、1カ月間レバノンに滞在したときはほぼ毎日食べていました。ホントにおいしい。

注文ごとに焼いてくれます。焼き置きも温めてもらえますよ。

アッカール県はシリアと国境を接しています。この道を車で20分も走ればシリアに入ります。近いな。

#チーズ #シャンクリーシュ

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