旅行日数にもよりますが、一つの国を訪れたら、首都(もしくは都会)には最低4泊はしたいもの。いわゆる観光名所が少なく、一日で十分などと言われている都市でも、人が集まる場所首都は、掘ればいろいろあるものです。アゼルバイジャンの首都バクーも、“一日で十分な町”という意見が多いようですが、そんな短い時間では到底満足できません。私は都会が好きなのです。
では、田舎や地方はどうでもよいかといえば、そんなこともなく。一週間ぐらいあればもう一都市ぐらいは訪れて、また違った一面を探ってみるのです。どんなに小さな町でも2泊はして。多くの場所に行きたいと思う反面、スタンプラリーのような旅行は好きではないのです。
大カフカス山脈の南側、バクーから北西に車で約5時間の場所にある「シェキ」は、キャラバンサライと呼ばれる隊商宿などが有名なアゼルバイジャンの古都です。
バクーからは市内北西部にあるバスターミナルから、9時、12時に大型バスが出ており、冬場はオフシーズンだからでしょうか、予約は必要ありませんでした。が、この日は前日からの雪で、バスターミナルにたどり着くのも一苦労。危うく乗り過ごすところでした。
雪の影響でシェキ到着が遅くなるかと思いきや、予定通り午後2時過ぎに到着。予約してあったホテルへチェックイン後、とりあえず何か食べようと近くのお店へ。ホテルや観光地に近く、正直あまり期待していなかったのですが、ここが大正解!
小さな看板の、間口が狭い食堂兼居酒屋のようなお店。しかも個室なのです。
メニューはA4用紙に30個ほどの料理名が書かれただけのシンプルな物。その中に、「アゼルバイジャン風ヒンカリ」なる物が。ヒンカリと言えば、お隣グルジアの名物料理で、小籠包を大きくしたような、茹で肉まんのような、そんな料理です。では、アゼルバイジャン風とは?お店のおじさんに、何個ぐらい?どのくらいの大きさ?などと聞いてみるものの、いや、何個とかではないんだ、と。とりあえず注文してみると…。
あ~、これ、初日に入ったレストランで店員さんがまかないに食べていたのだ~!気になっていたけど、これも「ヒンカリ」なのね。共通点は小麦粉生地を使った料理ということ、で「ヒンカリ」の元々の意味が気になるところです。た、確かに「何個」とかではない。
一口大の菱形の生地は茹でてあり、モチッとした食感。炒めた羊の挽肉に、溶かしバターをまわしかけたシンプルな料理です。挽肉が少ないって思うでしょ?でも、独特の羊の香りが強く、いわゆる具だくさんにすると、くどくなってしまいます。
あ~、なんだかお酢を垂らして食べたいなぁ、と、そんな時にはスーマックを一振り。
酸味のあるウルシ科の植物で、レバノン料理などによく使われますが、アゼルバイジャン料理にも多用されていました。
二品目は「ピティ」という料理。マグカップのような素焼きの器に羊とひよこ豆の煮込みが入っています。
この料理は食べ方が独特で、まずは汁を一旦皿に出します。
残った具をフォークでつぶします。
あとはスープにパンを浸したり、つぶしたお肉をすくったり。
旅行中何度か食べましたが、ドライアプリコット、栗などが入っていることもありました。
これ、イランで食べた「アーブグーシュト」にそっくりです。イランでは専用の道具でつぶしていましたが、アゼルバイジャンではフォークでつぶすのが一般的のようです。
6畳ぐらいの個室。山小屋のような雰囲気です。
次の日は朝からバザールに出かけます。バクーのバザールとは違って、非常に活気のある、まだまだ現役の市場です。
パンあり、
お肉あり、
魚もあります。
鶏は路上に並べられ、売られていくのを待ちます。その場で屠るのを見ていないので、料理する前に家庭で屠るのでしょうか。
手作りチーズやジャム、お漬け物などは専用ブースにずらっと並んでいました。
シェキ名物、その名も「シェキ・ハルバ」は網状の米粉生地にナッツをはさみ、シロップをかけたお菓子。ナッツの量などによって値段が違います。
ウロウロしていると、何やらいいにおいが。朝ご飯もまだでお腹がペコペコに、この炭火の香り。我慢できずに入った食堂はトレーラーハウスのような小さな小さなお店。
お昼前というのに、もうウォッカでお肉をつまんでいるおじさんも。
メニューなんてなく、チキンか羊かの2種類。前日に羊をがっつり食べたので、この日はチキンを選びました。
これが…!今まで食べたチキンの中でも1番と言ってもよい位の美味しさ!
骨付きモモ肉のぶつ切りですが、かぶりついた瞬間に、チュルン、透明でキラキラ光る肉汁がじゅわー。腹ぺこ補正がかかっていたとしても、間違いなく美味しいと断言できます。
スーマックで和えた生玉ねぎが、箸休めに丁度よい。
アゼルバイジャンで1カ所だけしか再訪できないとしたら、間違いなくこのお店を選びます。
冒頭で、スタンプラリーはイヤだ、小さな町でも2泊はしたい、などと偉そうなことを書きましたが、実は結局シェキには1泊しただけでバクーに戻ることになりました。ああ、もっと居たかったなぁ。