アラブ料理と聞いて思い浮かべるものの一つに、ケバーブがあります。一般的には串刺し肉を炭火で焼いたもので、街角でジュージューといい香りが漂う、誰もが大好きな料理です。
実はケバーブにも呼び方に地域差があり、エジプトではケバーブ=一口大の肉、コフタ=挽肉なのですが、シリアやレバノンなどのシャーム地方では、ケバーブ=挽肉、シアフ(シャアフetc...)=一口大の肉となります。ちょっとしたことですが、覚えておくと便利ですよ~。だって、今日はがっつりお肉!と思っているところに、挽肉の方が出てきたらちょっとガッカリですから(結局どちらも美味しいんですけどね)。
ちなみにヨーロッパや、最近では日本でもよく見かけるグルグル回転お肉サンド「ドネル・ケバブ」はアラビア語圏では「シャワルマ」と呼びます。
ケバーブは炭火で焼くだけではなく、煮込み風の料理もあるのです。エジプトでは、お鍋のケバーブという意味の「ケバーブ・ハッラ」がその代表ですが、シリアには「ケバーブ・ヒンディー」という、トマトソースで煮込んだ料理があります。
インド風ケバーブというその料理「ケバーブ・ヒンディー」は、その名前から、ちょっとカレー風味なのかな?と想像してしまいますが、意外にもシンプルなもの。スパイスががっつり効いた料理というわけでもないのです。
では、なぜそんな名前がついているのでしょう?数冊のアラビア語の書物によれば、元々はタマリンド、アラビア語でインドのデーツという意味の「タムル・ヒンディー」と少量の砂糖を使って味をつけていたことに由来するとのこと。
現在ではタマリンドを使うレシピは一般的ではありませんが、名前はそのまま、インド風と呼ばれています。
似たような料理に「ダウード・バーシャ」があります。こちらもミートボールのトマトソース煮込みなのですが、違いをあげるとすれば、ダウード・パーシャーはまん丸ミートボール状、コロコロとフライパンで表面を焼いて(ここは省略される場合も多い)、トマトソースに入れてお鍋で煮込みます。対して「ケバーブ・ヒンディー」は、形は楕円状、トマトソースと一緒にオーブンで仕上げます。
もっとも、「ダウード・パーシャ」は広い地域にありますが、「ケバーブ・ヒンディー」はシリア、もっと細かくいうとダマスカス料理とされています。
手の込んだ料理風ですが、主な材料は挽肉、トマト、玉ねぎの3つだけ。ささっと下ごしらえをして、オーブンに入れるだけでできちゃいます!
シリア人の友人、ラシャーさんに作ってもらいましょう!
材料
挽肉 500グラム
玉ねぎ 小さめ2~3個
トマト 1キロ
塩、こしょう、ミックススパイス
油
作り方
①玉ねぎを薄切りにする。鍋に油を熱し、軽く色づくまで炒める。
②トマトは1センチ角に切る。鍋に加え炒める。水分が出てきたら火を弱め、ゆっくり煮詰める。
③塩、こしょう、ミックススパイスを加え、味を調える(水分が足りなければ水を足す)。
④挽肉に塩、こしょう、ミックススパイス(小さじ1杯が目安)を加え、楕円状に成形する。
⑤トマトソースをオーブン用トレイに移し、挽肉を並べる。180度に予熱したオーブンで挽肉に火が通るまで加熱する。
この日はパンを添えていただきましたが、ご飯と一緒に食べるときは水分を少し残すといいですね。
挽肉は牛でも羊でも好みの方を。羊のおしりの部分の脂「レイヤ」や、玉ねぎのみじん切り、パン粉を加えることもあります。
トマトは皮をむいて使うこともあります。